第4章 禁じられた2人
彼女がバレー部に入ってきた理由を僕は、一年の終わりに知ることになった。
ウチの部活に彼女の好きな人がいて、ソイツ目当てで入ってきたのだと知った時、既に彼女に恋をしていた僕はショックとその反動形成というヤツで、彼女を酷く罵倒し、傷つけた。
気持ち悪い、と罵った。
死ねばいいのに、と聞こえよがしに言った。
彼女にだけ挨拶を返さなくなって、彼女からはドリンクを受け取らなくなって、どうしても必要な時しか彼女と話さなくなって、その時だって僕はかなり酷い態度で彼女に接していた。
本当に気持ち悪いとも死ねばいいとも思ってない。
あるいはもっと酷いことだって言ったけれど、全部全部彼女に忘れて欲しいと思うのは、独り善がりで身勝手なわがままなのだろうか。
「でも、ちょっとだけありがとう、って思ってるよ。月島君がいなかったら私、暴走してたかもしれない。無理だって、気持ち悪いって言われるだけだってわかってるのに。月島君が先に私に気持ち悪いって言ってくれたから、踏みとどまったところあるもん」
だから、そういう意味ではありがとう、と星川は口の端を少しだけ上げて、わかりにくい笑顔を作った。
それでも今日初めての、まっとうな笑顔だったからよしとしよう。
そんな話をしている内に体育館へと辿り着いた。
ボールの音と、少しだけ開いた扉の隙間から張られたネットが見えたから、僕らが一番なわけじゃないことを知った。
「結構早く来たから一番ノリかと思った」
そう言った彼女の発言に合わせて時計を見れば、6時を10分ばかり過ぎたところだったから、言い分はよくわかる。
まあこの時間に来てるって言ったら変人コンビのどちらかか、またはその両方なんだろう。
星川もそれに気付いたらしく、眉を下げた。