第3章 大切な二つの贈り物~二つで一つ~
―歌恋side―
(安土に行くのは半年ぶりくらいかな?桜花も成長したし、駿はますます家康に似てきたからびっくりするかな?)
安土へは11月の末から行き、年を越して少ししてから戻る事になり、歌恋は子ども達の晴れ着や、自分や家康の晴れ着や着物、小袖をまとめて荷造りをしていた。
荷造りをしていると懐かしい物が出てきた。
「懐かしいなぁ・・・」
駿「母上!?この羽織は父上の?」
「そうだよ。これはね、まだお父様と付き合ってる時のクリスマスに作った羽織なんだ。」
羽織を包んでいた紙からそっと取り出し、裾と袂に黒の葉やその上に少し散らばった白い梅の花の刺繍をなぞり懐かしんでいた。
それはまだ結婚する前のクリスマスに自分が作り家康に送った羽織。
金色に近い黄色の生地で、一目見た時からこれで作りたいと思った。
その時から10年の時が過ぎていた。
桜花「おかーしゃま!何見てるの?」
「居た。駿もここにいたんだ。」
「あっ、家康と桜花!」
「何見てたの?」
「うん、色々着物や羽織を見繕ってたら懐かしいのが出てきたから、思わずね・・・。」
「これ、歌恋がまだ付き合ってる時に作ってくれた羽織だね。」
祝い事の席の時などに気に入って良く着ていたが、家康も年をとり、少し落ち着いた色の物を着るようになっていた。
「これ、もっていくの?」
「うん。久しぶりに安土城にみんな集まるんだもん。」
家族4人で昔の事を懐かしみながらこうやって話が出来る時間を歌恋と家康は何よりも幸せな時間だと感じていた。