第4章 【聖夜の翡翠princess】第一幕
二十三日の朝、九時。
駅前のある店の前で立ち止まる。
『princess story』
(プリンセスストーリー)
ウェディングドレス、カラードレスのオーダーメイド専門、アトリエショップ。コンセプトは、女の子なら、誰もが「憧れのお姫様」になれる。
一つだけの物語。
希望や思い描くものなどを相談。その素晴らしい意向を聞いた瞬間、胸を打つ想いで面接に訪れた。そして、就職して来年の春で六年目。
(ふふっ。高校生の頃。月が変わるごとに、このガラスにオデコをくっ付けてたっけ?)
懐かしい思い出に、クスリと笑い、店の隣にあるショーウィンドウのガラスに触れる。蘇る記憶。戦国学園の制服に身を包み、キラキラ目を輝かせ、私は心を躍らせた。
今月、
十二月のテーマはもちろんXmas。
真っ赤なAラインのベルベット素材のカラードレス。緑色と金色の繊細な異なる大きさのリボンを散りばめ、隣に飾られたクリスマスツリーと溶けこむように、イメージしたドレス。
(……まさか、こうして自分が製作したドレスが飾られる日が来るなんて、ね)
高校生の頃の私が知ったら、
きっとビックリするだろうな。
カランカランッ。
丸いアンティークのノブを回して、
扉を開け店内に入る。
ピンク色を基調にした店内。
天井が高く、大きなディスプレイウィンドウより光がたっぷり差し込む。女の子の心がわくわくするような空間をイメージした店内。アンティーク家具で揃えたインテリア。お城の一室のような雰囲気。中にも色々なウェディングドレスやカラードレスが、飾られている。
扉を閉めると、店内の奥にあるアトリエ兼、事務所に私は向かう。
コンコンッ。
ノックをして中に入り、
真っ先に頭を下げ、
職場の皆んなに挨拶。