第8章 【聖夜の翡翠princess】最終幕※R18
その日の夜___
乾杯!!
幼い頃のように、六人でパーティー。お母さんとおばちゃん、そして私が腕に寄りをかけた料理を、お父さんとおじさん、家康がグラスを片手に口に運ぶ。
「いよいよ、来月か」
「早く、ひまりちゃんのウェディングドレス姿見たいわ〜」
おじさんとおばさんに、笑顔を返す。
「荷物は、あのダンボールだけ?」
「ダンボール?あ、うん!マンションには、アレだけしか持っていかない予定だよ」
お母さんにそう答える。
どうして、そんな事を聞くんだろ?不思議に思っていると、お父さんがグラスをゆっくり机に置いて……
「家康くん。帰る時でかまわない。娘の荷物を、一緒に運んで貰えないか?」
……君の車に。
家康は一瞬、放心状態。
でも、すぐに……
「……ありがとうございます」
深く頭を下げた。
私もようやく意味が分かって。泣きそうになり、口を手で覆う。消え入りそうな声で、お父さんを呼ぶと……
「クリスマスプレゼントだ」
ひまりには、今よりもっと幸せになって欲しいからな。
両親からの素敵なプレゼント。約一ヶ月後の幸せを、慌てん坊のサンタクロースが今、届けてくれたみたい。
純白に視界を埋め尽くす。
足跡をつけながら私達は、
懐かしい通学路を手を繋いで歩く。
「結局、一日お預け」
「ふふっ。たまには、自分の部屋で過ごすのも良いかもよ?」
あの後、お父さんにお酒を飲まされ車で帰れなくなった家康。でも、私たちが片付けている間。文句一つ零さずに昔話の相手をしてくれていた。
私はコートのポケットから、
プリンセスのオーナメントを取り出す。
「高校生の時の私に言ったら、驚くだろうな~」
「何を?」
家康が、王子様ポーズ、王子様台詞。
その上、ダンスなんて……
私はクスクスと笑う。
心の中にそれを留めて、
しゃがみ込んで雪を丸める。
「内緒!えいっ!」
「はっ!って、冷っ!」
「ふふっ!隙あり~……わぁっ!」
「………ドジ」
すっぽり収まった、家康の腕の中。
あったかくて……
「……幸せ」
白い息と一緒に……
宝石箱のような雪空に届けた。
【聖夜の翡翠Princess】~fin~