第8章 【聖夜の翡翠princess】最終幕※R18
朝の九時。
寝室からリビングに移動。
カップを二つ取り出して、こぽこぽとコーヒーを注ぐ。
「はい。熱いから気をつけてね」
「……ってか、コレ。あり過ぎ」
ペアマグカップの一つ。
ミルク入りじゃない方を、家康に渡してソファに腰掛ける。
「だって、本屋さんにいっぱい特集で置いてあったんだもん」
「パンフレットも、貰い過ぎ。これだと、余計に決まらない気がするけど」
テーブルが隠れるぐらい、大量のハネムーン雑誌と旅行会社のパンフレット。家康は、カップに口つけ、手に持っていた一冊を戻す。
「せめて、国内か海外か絞ってくれない?」
溜息を吐く。
「二人で決めたいから!……でも、本当はね」
私はカップを落とさないように、しっかりと両手で持って、家康の肩に頭を預けると……
一緒なら、何処でも嬉しい///
ちょっと恥ずかしくて、あえて目を合わさずにそう言うと……
視界に入り込んだ、翡翠色の瞳。
「俺も……」
コツ。ぶつかり合ったペアのマグカップ。二つが一つに合わさり、真ん中に浮かび上がったのは、大きな三つ葉のマーク。
昼過ぎ車に乗り込んで、降り積もった雪の中、ゆっくりと走り出す。
私は、赤いハートのクッションを膝の上に乗せて、写真を一枚握り締めた。
「先生!ひまりお姉ちゃん!」
私達を見るなり笑顔で、
走り寄ってくるみつばちゃん。
その手には、
一冊の絵本と魔法使いのオーナメント。
「「メリークリスマス」」
二人で一緒に写真をプレゼントした。
「こっちに来てくれないか?」
おじさんに呼ばれ、クリスマス会が開かれていたコミュニケーションルームの、壇上に上がると……
「来月に式を予定している。息子の婚約者、ひまりさんだ。とても素敵なお嬢様さんで、息子には本当に勿体無い」
「お、じさ……ん……」
「いつか、職員の集まる場で紹介したかった」
私は涙を拭いて、頭を深々と下げる。温かい拍手を聞いて、当分、頭を上げれそうになかった。
そして……
病院前で待っていてくれた、佐助くん。
家康は、お礼を言ってポラロイドカメラを返す。
「これは、昔。クリスマスに貰った物だ」
キラッと光る眼鏡のフレーム。
それを聞いて、
私達は驚き……最後は笑った。