第3章 【幼い頃の聖夜】
しかし、Xmasの朝。
女の子の枕元に届いたのは、ピンク色の可愛い靴と、可愛い首飾り。サンタさんからのプレゼントに喜びつつも、少しだけ小さな肩が下に落ちたのを……
男の子は見ていた。
「ピンク色で、お姫さまみたいに見えるよ」
「うん……。でも、みたいじゃなくて。ほ、んとうにっ……ひっ、く」
元気を取り戻したくて、
そう言葉をかけたが……
途端に、大きな瞳から溢れた涙。
女の子はシンデレラの絵本が一番大好きで、毎日、毎日、大切そうに胸に抱いていた。そして、男の子は気づいた。女の子はガラスの靴でも、ピンク色の靴でも同じぐらい嬉しいのだ。
ただ……
一緒に付いてくると思っていた、あるモノがないことが、悲しかったのだと。
それは……
「魔法で…っ。ひ、っく…プリンセスにいっかい…、だけっ…なりたかったの…っ……」
プリンセスになる魔法。
空を飛べるサンタなら、
魔法が使えると思っていたのだ。
男の子は、地球儀をコトリと床に置き……。困ったようにふわふわの輝く金色の髪を揺らす。グズグズと泣きじゃくる女の子。それを笑顔を戻す方法がないか、頭を悩ませた。
「お姫さまじゃなくて、プリンセス?」
「う、ん。だって…幼稚園のおとも、だちが、シンデレラはプリンセスだ、って…いってたんだもん」
お姫さまとプリンセスは、
ほぼ同じ意味。
しかしまだ幼い女の子には、
まだそれがわからなかった。
しかし、男の子の一言で
「……ほ、んと?」
女の子の涙が止まり……
「うんっ!」
笑顔が戻った。
男の子はホッとしたように息を吐き、
女の子の長い髪を後ろからかきあげ……
首飾りの紐を綺麗にリボン結び。
「付けてくれて、ありがとっ!」
小さな首にキラリと光る石。
それを不思議そうに見た後、そっと触れた。
ガラスの靴、魔法、舞踏会……
シンデレラストーリー。
女の子ならきっと、一度は夢見る物語。
これが、
聖夜の翡翠
【princess story】の始まり。