第8章 【聖夜の翡翠princess】最終幕※R18
凛とした透き通る闇の中に、
大きなクリスマスツリーを
浮かび上がらせたのは……
近くに聳え立つ、
高級タワーマンション。
建物自体がスクリーンになり、現れた大きなクリスマスツリーに、家族が仲良く飾り付けをするかのように、少しずつツリーにオーナメントが、飾られていく映像が映し出される。
「きれ…い……」
ひまりは声を震わせ……。
瞳はその輝きに釘付け。
あのタワーマンションは、織田先生が所有者。
(ほんと、派手好きのいいとこ取り)
俺は背後から包み込む。
「……良かったね。ひまりのことになると、皆んな。すぐ協力してくれたし。今夜は余計なお節介にも感謝しないと……」
腕の中でコクリと頷く、プリンセス。
本当だね……
けど、暫くして……
「あ、のね…っ」
ひまりは急に身体を反転させ、甘えるようにしがみ付き、俺の胸に顔を埋めた。
「ずっ、と…寂しく、て。で、も…言えなっ…」
「ひまり……」
小刻みに息をして、一生懸命俺に伝えてくる。
「で、も…大好きだから。だ…い、すきだから…我慢して、…言わない、…とか…じゃ、ないの」
ネクタイに手を置き、
ひまりは一呼吸置いた後。
「こ、うして。会えた瞬間。……幸せすぎて…っ」
どっかに消えちゃうの。
真っ直ぐに俺を見上げる。
雪みたいにまた、少しずつ積もったり、不安な時は、あっという間に積雪し過ぎて動けなくなるかもしれない。
でも……
でもね……
「こんな風に…触れるだけで…っ」
心も……
身体も……
不安も。
「すぐに、溶けちゃう…っ…」
すっごく、幸せなんだよっ。
(っ!!)
目に涙をためて、
頬を染めふわりと笑う姿。
簡単に俺の全部を奪い……
「そんな可愛いこと言ったら……」
溶けるだけでは、
済まされないよ。
俺に熱を与える。
ボォー……ン……。
「い、えや……す……んっ…」
「溶かす前に、まずは魔法。解かないと……」
ティアラだけ残して、逃げられたくない。
ガラスに手を突き、
首だけ少し後ろに回して、
潤んだ瞳を向けるプリンセスを……。