第8章 【聖夜の翡翠princess】最終幕※R18
お姫抱っこをして、廊下を突き進む。
足を動かす度、カツカツ……
大理石の床が響く。
プリンセスは、俺の腕の中。
落ち着かない様子で、もじもじしたり、視線が合うと紅潮した頬を隠すように、肩に顔を押し付ける。
そんな仕草に……
(……かわい)
背中に回していた手。
こっちに向いて欲しくて、そっと叩く。
すると、ゆっくりと肩に埋めていた顔を離して、ひまりは曇りのない、大きな瞳の中に俺を閉じ込める。
見てるだけで、吸い込まれる。
(……次は、綺麗だし)
部屋の前で……
「ふぅ、…ん……」
貪るように唇を重ねた。
食事を終えた後、付け直していたローズピンクのルージュ。そんなの一切構わず、目の前の果実のように甘い唇に、自分の唇を何度も押し付ける。
綺麗なドレス姿、
ティアラを乗せた結い上げた髪。
細い首に巻き付く、首飾り。
花や三つ葉が刺繍された、繊細なデザイン。
これを元にドレスを注文。ひまりは溶け込むように、作り上げた。腕の良さが伝わる。
扉にカードキーを差し込み滑らせば、緑色のランプが点灯。靴を脱がして、床の上にそっと下ろす。
「……目、閉じて」
不安にさせないよう。意識した声を耳に届ける。瞼がゆっくりと塞がるのを確認してから、手を取り誘導して奥へと進んだ。
(今夜は、有り難く頂くか)
部屋の明かりは付けずに……リビングの窓ガラスの前まで来ると、カーテンを開ける。
「まだ、開けちゃだめ?」
「待って。……後、三分」
「三分?何か、はじまるの?」
ひまりは大人しく目を閉じたまま、繋がっている手を頼りして、俺の存在を確かめるように握り返す。
腕時計の秒針で、時間を計算して……
十二時を指す少し前。
「もう……。いいよ」
キスを合図に知らせる。
暗闇で、ゆっくりと持ち上がる瞼。
「多分。鬼王からのクリスマスプレゼント」
「え?鬼王って……あ。もしかして織田先生?」
俺は胸ポケットから、
クリスマスカードを取り出す。
オモテ面には【MerryChristmas】
ウラ面には『深夜十二時、外を見ろ』
最上階の全面ガラスに映し出された、銀世界。今から、何かがはじまる……
最後の魔法の時間が……