第7章 【聖夜の翡翠princess】第四幕
スローテンポの音楽。
手を引かれ、
そこに柔らかい唇が触れ……
ティアラにも口づけが落ちる。
「寒い中、待たせてごめん」
「ううん。それよりも、みつばちゃんの容態が……」
「ひまりがここに来る前に、病院に確認したから。今頃、目覚めて多分……ドジなサンタの落とし物。それを握りしめて、笑ってるかも」
ご両親にはドジとは言わず、敢えてあわてんぼうって伝えてきたと、家康は口元を緩める。ちゃんと、私のプレゼントも届けて貰った事を知り、笑顔とお礼を告げた。
「王子様……」
「プリンセス」
あえて、今だけそう呼び合って……
愛を確かめ合うように、暗闇で一度見つめ合い。
三度目のキス。
私は両腕を首元に絡ませて、
深い翡翠色のネクタイに、視線を落とす。
家康は両腕を、
ベルベットのリボンが付いた腰元に回すと……
「後で、魔法。
部屋で、ゆっくり解くから……」
覚悟しておいて。
そう甘く痺れるような声で囁いた。
吐息が触れるほどの距離。
ドキドキが止まらなくて、熱く胸を焦がす。
意識が急にそっちに集中して、
「きゃっ!!」
躓きかけ…
「やっぱり、ガラスの靴は禁止」
最後のダンスが曲が終わると同時に、私の体はふわりと浮いて、ローズピンクのパンプスが地面から離れた。
来てくれた皆んなに、二人で一緒に挨拶に回る。昔みたいに冷やかされたり、婚約、来月の結婚のお祝いを沢山貰った後、今度は最上階にあるラウンジに向かう。
すると、そこには…
「やっと、来たか」
「お腹空いていませんか?急いでお持ちします」
「政宗!三成くん!」
シェフの格好をした政宗。
ウェイターの格好をした三成くん。
「あーっ!間に合った!」
「ピアノなんて何年振りかしら」
「ゆっちゃん!副部長!」
奥の扉からは、
カートの上にケーキを乗せて、
駆け込んで来た大親友のゆっちゃん。
スレンダードレスに身を包み、グランドピアノの前に移動して一礼をする、憧れの先輩。
「み、んな……」
「泣かないの!弓乃特性、超スペシャルふわふわクリスマスケーキ!あげないよ!」
うん…!
私は、心から嬉しくて堪らない。
きっと、そんな笑顔を皆んなに向けた。