第7章 【聖夜の翡翠princess】第四幕
「メリークリスマス!」
「……開けてもいい?」
コクリと頷けば、家康はリボンの隙間に挟まっていた緑色のカードをまず見て、驚きの目を見せた。
どうしたの?
そう聞くと少し決まりが悪そうな顔をして、笑うだけ。カードをスーツの胸ポケットに仕舞い、丁寧に包装紙を広げ、箱の蓋を開けると……
「……もしかして、手作り?」
ネクタイの質感を確かめるように、指を滑らせ、取り出す。
「結婚式に付けて貰えたらなぁ……って。ネクタイピンは、ふふっ。さすがに作ってないよ」
ネクタイは家康をイメージして、想いをいっぱい込めたこと、タイピンのデザインは自分で考えたことを伝えると、
家康は顔の近くに持ち上げて……
「葵紋に翡翠……。ありがとう。……大切にする」
私に柔らかい笑顔と声を向けてくれた。言葉は少なくても、家康はちゃんとそこから喜びを伝えてくれる。
ネクタイを付けてあげると、ちょっと、照れ臭そうに目元を赤らめ……
「だから、ネクタイはいらない。って、言ったのか」
「ん?誰が?」
鬼王。そう、ボソッと呟いた後……
私の顎を掴んで上を向かせ、今度はさっきより長く唇を重ねた。
「お前ら、いちゃつくのは後にしとけ。もたもたしてると魔法、解けるぞ」
「これが、小学生のシナリオだと知った時は、さすがに驚いたな。ククッ」
秀吉先輩と、明智先生。昼間を再現するように顔を合わせる「みつばが考えたシナリオ」そう、一言添えた上で二人にお願いしたみたい。家康はすかさず「ここからは、俺の演出」だと、告げた後……
右手を胸にあて。
本物の王子様のように……
スッと、左手を私の前に差し出す。
「舞踏会へようこそ」
翡翠のプリンセス。
ふと足元を見れば、赤い絨毯が奥の扉に向かって、続いているのに気づく。
え?舞踏会?翡翠のプリンセス?
はてなマークを浮かべつつ、その甘い表情にドキドキして……
差し出された手に、自分の手を重ねた。
エスコートされ、大きな扉の前に立つ。
赤い大きな両開き扉。
それが、ギィー……
鈍い音を立て、
「楽しんで来いよ」
「思う存分な」
憧れの舞踏会の、幕開け……