第7章 【聖夜の翡翠princess】第四幕
そして、
私の顔の前に差し出す。
「こっちは、奇跡の石」
はめてみて。
そして右手で、私がティアラを持っていた手を支えるように下から持ち上げた。
持っていた箱をさっき蓋を置いた上に重ね、震える指先でキラリと光る石を、人差し指と親指で落とさないように挟む。
大小のハートが二つくっ付いたデザインの、翡翠。
石を持った手で涙をごしっ。と、一度拭い、ゆっくりとした動作でティアラの中心部に……
カチッ、
はめ込む。
すると、背後で家康は安堵の息を漏らす。
「……本当はこの首飾り。借りようとした。でも、それだと勘付くかと思って」
まぁ。鈍感なひまりなら、気づかないか。クスリとした笑い声と一緒に、耳元を擽ぐる小馬鹿にしたような、台詞。
でも、心地良いぐらい優しい。
指の感覚だけで形を覚えていたなんて、それこそ魔法みたい。そう思っていると……
「俺のは、魔法の石。……そっちは、みつばが……」
少し言葉を濁した家康。
そして、遅刻した理由を聞き……
また、涙が溢れた。
「……だから、まだ未完成のままだけど。……こっち。向いて」
「っ、く…未完、…せ、い…。な、んかじゃ、ないよ……」
ハピネスまほう!
どんな想いで、みつばちゃんがコレを届けに来てくれたか。
どんなに、私達のことを想ってくれているか。
すっごく、すっごく…伝わって。
押し寄せるように、名前もわからないぐらい。溢れて、広がって……
私は、家康にティアラを預ける。
そして、さっき置いた箱の上。
プリンセスのオーナメント。
それを手に取る。
どうやって、これが届いたのかはわからない。でも……きっと、奇跡、魔法、みつばちゃんの想い……。
沢山の、沢山の、
幸福が届けてくれた気がして……
「ちゃ、んと……と、どけてくれたよ」
私をプリンセスにしてくれる。
魔法を……。
クリスマスツリーに、背を向けて……
「一緒にはめよう」
「二つを…一つに……」
暗闇の中。
翡翠の瞳の奥に、微かに見えた光。
小さなハート。
二人で一緒に……
みつばちゃんの想いを、
……はめ込んだ。