第7章 【聖夜の翡翠princess】第四幕
高さ約3.5mはありそうな、存在感溢れる華やかなツリー。その下には、外国映画などで良く見かける光景。大きなリボンで結ばれた、赤、ピンク、緑のプレゼンの箱が積まれ……
(一つだけ、小さい……)
目線の高さより少し下にあった箱。
その中の緑色の箱だけサイズが違うのに、気づいたプリンセス。惹きつけられるように、手に取る。
勝手に中を見るのには、気が引けたが……
プリンセスへ
【MerryChristmas】
赤いメッセージカード。
その文字を読んで、迷いは消え……ゆっくり蓋を持ち上げ、カード、プリンセスのオーナメントを近くの箱の上に。
そして、
箱の中身に視線を移した途端。
(これ……っ!)
一生この瞬間は忘れられない。そんな驚きを見せ、胸をふるふると震わせると……そっと、中に入っていたものを取り出して……
「ティアラ……」
手のひらに乗せた。
三つのハートがモチーフになった、ピンクゴールドのティアラ。真ん中のハートだけが大きく、両サイドのハート二つは横向きになり、天使の羽を再現したようにくっ付いていた。
左側のハートの中心には、ハート型にカットされた一月の誕生石、ガーネットのグリーン。
右側のハートの中心には、同じくハート型にカットされた三月の誕生石、モルガナイト。しかも、希少価値の高い、綺麗なローズピンク。
(似てる……)
プリンセスはキラリと光る薬指。一瞬だけ視線を落とすと、ある事に気がつく……
真ん中の一番大きいハートのモチーフ。その中心だけは、後から何かを埋め込むように型があいていることに。
(もしかして、この形って……)
その部分の形を、感触で調べるように親指の腹で触れた時。
ーーいつか、俺がプレゼントする。
ーー……ほ、んと?
ーーだから、泣かないの。
ーーうんっ!
(……っ!)
ーーいつか、ひまりをプリンセスにしてあげる。
この石、それまで大切にしてて。
映画のフラッシュのように突然、蘇るある幼き頃の記憶。頭の中で、時計の針がゆっくりと逆戻り……
薄っすらと、線と線が繋がり始め……
持っていたティアラに…
まるで、雪の結晶ような光が……
瞳から一つ滑り落ちる。