第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
時刻は午後八時半過ぎ___
病室で、
少女は安らかな寝息を立てていた。
「…は、…ぴね………」
微かに動いた唇。
(…………寝言か)
起きたかのかと思い、顔を覗き込んだがすぐにスヤスヤと規則正しい寝息が聞こえ、短い息を吐く。
俺はパイプ椅子に座り、みつばが目覚めるまで側についていた。みつばの両親は今、外に出ている。今晩は病室で泊まることに決めたようで、目覚めた後、ちょっとした聖夜の祝いが出来ればと、準備をしに一旦、帰宅。
雪で道路は渋滞。
電車も路線が止まっているが、みつばの家はここから車で十分ほど。
もうそろそろ、戻って来る頃だ。
(ひまり……)
数分前。携帯から電話をかけたが出なかった。着信履歴がないの所を見ると、多分……ずっと我慢してこの寒空の下、待っていたはず。
(天音や、秀吉先輩達も電話に出ないし……)
刻々と待ち合わせの時間から、
一時間半は過ぎた。
全く状況が分からない。変な男に引っかかっていたりしてないかと、そんな心配ごとばかりが浮かび、頭がモヤつく。両親が来たら、もう一度連絡をしようと思った矢先。
ガラガラッ。
両親が大荷物を抱え、
病室に入って来る。
そして、入ってくるや否や……
母親からある物を差し出され……
「みつばに頼まれていた物を、車に落としてしまっていたみたいで。本当は紙袋の中に一緒に入れて欲しいと、言われていたのですが」
それを、受け取る。
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ちこくする先生へ
ハピネスまほう!
王子さまに、なぁれ!
みつばサンタより
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俺は目を見開いた。
「実はさっき、お渡しをした紙袋の中身。みつばが希望した物なんです。先生への、クリスマスプレゼントしたいと……」
良かったら見て下さい。
そう促され、貰った物を目の前で開けるのは、不躾だと思いながら……ロッカーから持って来ていた荷物の一つ。
紙袋を開ける。