第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
プリンセスのオーナメント。
私はその背中にリボンで、
何かが結んであるのに気づいて……
ゆっくり、手に取る。
病院で完成品を見せて貰った時。
その時は、
付いていなかった首飾り。
小さなメモ書き。
私はスッーと頬から、
一筋の光が滑り落ちる……
流れはじめは生暖かく……
顎に辿り着く頃には、
氷に変わったように冷たい。
でも、凍えそうだった心にぽっ…と、温かい火が灯ったように……
「み、つば……ちゃ、ん……」
あったかくなった。
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ひまりお姉ちゃんへ
ハピネスまほう!
プリンセスに、なぁれ!
みつばサンタより
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小さなメモに書かれた、メッセージ。
(私の為に…作ってくれた、の……?)
どうしてこれが?
プリンセスになぁれ?
それに、この首飾り……
色々と疑問が浮かぶ中……
胸がぎゅっと詰まる。
ひと針、ひと針の縫い目から、
嬉しさの感情が一気に込み上がり、立ち尽くす。
すると、……背後から……
ぎゅ、ぎゅっ、ぎゅっ……
近づく足音。
振り返った瞬間。
ただ、ただ、驚きが突き抜けた。
「ここにいたのね!」
遠い地に居るはずの、
光り輝く金色の髪が、暗闇で揺れ……
「店になかなか来ないから、心配してたのよ」
ショートヘアから、雪がはらりと落ちる。
「天音ちゃん!マネージャー!どうしてっ!!」
一瞬、夢を見てるのかと思って。
涙を拭いながら、目を擦る。
二人は、クスリと笑い……
「「さぁ!変身するわよ!」」
私の背中を押して……
あれよあれよと駅前の……
【princess story】
自分の勤め先に私は押し込まれ、営業時間が過ぎた店内へと身体が滑り込んだ。
guest room(ゲストルーム)
そう書かれた扉が開く。
ここは普段、お客様の採寸をしたり展示されたドレスを試着する場所。
「さぁ、プリンセス。急いで」
「ヘアメイクは私に任せてね」
マネージャーが差し出したトランク。それは昨日、私が完成したドレスを仕舞った物だった。