第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
きゅっ、きゅっ……。
「見て!うさぎさん!」
白い雪を固め、
ギザギザ葉っぱ、南天の赤い実を二つ。
男の子は、両親に得意げに見せる。
「上手に出来たね!可愛い!」
「へへっ!」
「持って帰るのか?」
「う〜ん……」
父親に聞かれ、男の子は悩む。もし、家に持って帰る間に溶けたら可哀想だと思い、あと三つ同じように雪うさぎを作ると、近くにあった花壇のレンガの上に、仲良く四つ並べた。
「さみしくないかな?」
「ふふっ。きっとね」
「ほら、風邪引く前に行くよ」
暫く歩いていると……
キラリと何かが光るのが見えて、
男の子は両親から手を離して、
地面に伸ばす。
「これ、何?」
雪で埋もれかけていた、
プリンセスのオーナメント。
「ん?どれ?……プリンセスのお人形?凄く可愛いね!落ちてたの?」
「これは、ツリーに飾り付ける物だ。……誰かの落し物みたいだね」
「お、とち…もの?」
可愛らしい女の子を抱いたまま、
父親はしゃがみ込む。
「背中部分にメモが結んである……」
「ほんとだね。でも、勝手に見るのも……あれ……この石……」
プリンセスに付いている首飾り。母親はその小さなハート型の石に、見覚えがある気がした。
「どうしたの?」
「この石がね。あるお客様にオーダー頂いた時、少しの間だけお預かりしていた、石に似ているような気がして。気のせいかな?」
「公園のツリーに付けたら、落とし主さんにわかるかな?」
「すぐ、近くだし。交番に届けるより目印になるかもね」
時計台公園に向かった。