第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
午後七時過ぎ。
時計台公園___
ひまりは手に息を吹きかけ、大きなクリスマスツリーを見上げていた。クリスマスツリーと一言で言っても、シンプルな雰囲気。
時計台から少し離れたところに立つ植木。それに、イルミネーションの装飾がされただけのモノだった。駅前にあるような、彩りの鮮やかで華やかなイメージとは違い、オーナメントは何一つなく、ただ金色と月白の小さな光がぽつぽつ。
それでも、この公園内で明るく輝きひまりは魅了されたように、視線を一心不乱に向け、立ち尽くしていた。
クリスマスツリーの周りには、同じように待ち合わせをしている人。
「もう!遅いーーっ!」
「悪い。寒かったよな。早く、店に行こうぜ」
「お腹ぺこぺこだし!レストラン予約してくれたんだよね?」
次々とツリーの近くから、
寄り添い合い姿を消していく。
舞い落ちる雪を頬に受け、
白い息を煙のように吐き出す。
はぁ、っ…………
夜空に溶けて消え……
「家康……まだかな……」
小さく動く唇。
長い睫毛に降り積もる、
綿のようなふわりとした光。
待ち合わせ時間から気づけば三十分が過ぎ。さすがに何かあったのではないかと、不安が募ったひまりは、鞄から携帯を取り出した時……
「え……。うそ……オーナメントがない!」
ここに来る間の道中。
どこかで落としたのかもしれない。
そう、思い……
(携帯持ってるから、大丈夫だよね)
来た道を辿りながら、探しはじめた。
刻々と時計台の針が、進んでいく。
そして、
少しずつ……
少女の二人への想いが……
【奇跡】と【魔法】が、
届きはじめた……。