第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
無機質な、機械音が鳴る……
ピピビッピピッ……
ベッドに移動。
人工呼吸器の用意。
「はぁっ、…はっ…せ、んせ…お、姉ちゃ…」
「無理に話さなくて良い。目を閉じてラクにして」
「はっ、…はっ…は、やく……石はきっと…」
こんな状況でも、俺とひまりの事を気にしているのが、痛いほど伝わり……目を閉ざしたくなるような、痛々しい表情を、みつばは浮かべる。
蒼白な顔色、唇、皮膚、爪の色。
それを、確認して冷や汗を拭き取り……
「早く、点滴の準備!」
時には厳しい声をまき散らし。
「みつば!みつばっ!」
「落ち着いて下さい。発作は出ていますが、命に別状はありません」
取り乱す両親が、
少しでも安心するよう声を掛ける。
俺は、処置をしながら……
(くそっ…。みつば……ごめん…)
呼吸が微かに乱れていたことに、気づいていたにも関わらず。俺は自分の判断力の不甲斐なさに、痛いほど冷たくなった小さな手を、握りしめた。
暫くすると、みつばの容態が安定して、安らかな寝息が耳に届く。俺は、呼吸器だけ外して、心拍数の数字を確認。
時計の針が、待ち合わせの七時を指した頃。
雪で遅れていた夜間の当直医が到着したと、看護婦から連絡が入った。
みつばを病室に移して、俺は落ち着きを払い、両親から詳しい事情を聞く。
「何があったんですか」
「どうしても、時計台のツリーに行きたいと。大切そうに何かを握りしめて……」
自分は、魔法使いだからと。
魔法をかけにいくと。
ーーへへっ///だって、先生もひまりお姉ちゃんも大好きだからっ!あとはねっ!実は石はツリーに……。
母親は咄嗟に抱きかかえ、温かい場所に移動して救急車を呼んだことを話す。
手に持っていた物は、恐らく抱き上げた時に、落としてしまったと。
俺は色づきはじめた、
柔らかな頬に触れ……
白衣の中にある、
魔法使いのオーナメントを……
強く握りしめた。