第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
三人が見上げる夜空から、
ちら、ちらと、舞い降りる雪。
肩に乗る雪は、水滴と変わり……
跡形も無く消えて行く。
予約していた、クリスマスケーキ。
それを、取りに行った帰り……
「え?駅前の時計台公園に?」
「一体、何の用事で行くんだ?」
「みつば!魔法使いだから、魔法をかけにいくのっ!」
両親二人は、
え??魔法使い??
不思議そうに顔を見合わせる。
しかし……
「サンタさんにお願いしたの!魔法を届けさせてくださいって!」
強い想いを聞き、
車を駅前に走らせた。
プレゼントを届けて貰う側ではなく、プレゼントを届ける側を願った少女。
雪で車が渋滞。
母親と二人で車から降りて……
一人の少女は最後の魔法をかける為。
時計台横のツリーを目指す。
プリンセスのオーナメント。
それを握り締め、
車から降りて、きゅっ、きゅっ。
ーー初めまして。みつばちゃんだよね?素敵な名前!ふふっ。ハピネスだね!
ーーえ?ハ、ピネス?
ーー三つ葉の花言葉は、幸福って言われてるから。幸福は、英語でハピネス!って、言うんだよ!
四つ葉は幸運
白詰草は約束
優しく教えてくれた女の人。
少女は、すぐに仲良くなった。
「はっ、……はぁ…っ……」
白い絨毯に小さな足跡を咲かす。
ーー先生は、何でお医者さんになったの?
ーー……昔。ドジな女の子が、転けてケガして……魔法みたいって笑ったから。
ーーえ?まほう?
傷を見るから痛い。
傷を見なければ和らぐ。
照れ臭そうに昔話をした担当医。
少女は、それを聞き笑顔になった。
ーー先生は、魔法使いじゃなくて……
クリスマスの奇跡。
魔法少女のシナリオ。
ズキッ!!!
雪のように白い顔を、微かに歪ませ……
「ハ、ピネス…まほ、う……」
大好きな先生とお姉ちゃん。
「幸せになぁ…れ……」
魔法の呪文を唱え…
積雪の中に、倒れこんだ。
「みつば!!」
プリンセスのオーナメントと、共に。