第6章 【聖夜の翡翠princess】第三幕
【聖夜の翡翠princess】※第三幕
24日午後、魔法使いのオーナメント。
カツ、カツ……カッ…
廊下を歩きながら。
ふと、二階の窓から外を見る。
積雪が薄っすらはじまった道路。信号待ちしていた一台のバス。それが敷地内に入り、病院前のバス停に停車するのが視界の端に映った。
俺は顔を正面に戻して、
ある病室へと向かう。
「みつば、入るよ」
「はーい!」
誰かさんみたいに、間延びした元気な返事。白い扉を開け、雪が敷き詰められたような、清潔感のある真っ白な空間の病室に入る。
ベットの上で、何かを大事そうに握りしめるのを見て、俺はフッと軽く息を吐いた。
脈を計りながら、
「完成したの?」
「あと、首飾りを付けたら完成〜!先生は、五分以上ちこくだよ〜」
先生は。つまり、ひまりも五分は遅行したのがその台詞から読み取れる。みつばに、もうちょっと早く来れば会えたのにとか、今日のひまりはいつも以上に粧し込んで、綺麗だったとか、息継ぎも忘れたように、話す。
「お姉ちゃん、先生にめーわくかけるから、自分からは話しかけないって言ってたよ」
「だろうね。前に廊下で会った時。そわそわしてたし」
ひまりは気を使ってるみたいだけど、婚約者なんだし、手が空いてる時なら変な遠慮しないで欲しいのが本音。
俺は全然、かまわない。
寧ろ、嬉しい方。
無理な時は、それこそちゃんと場をわきまえてひまりは行動出来る。
(ってか。逆に、あんな可愛い反応されたら勤務中なのも忘れて、連れ出したくなるけど)
廊下できょどきょどして、目線をおろおろ動かすひまりを思い出して、口元が無意識に緩む。
あの時は、何処かに連れ去りたくなる衝動抑える為に、去り際に頭に触れて我慢したけど……
頬を薄っすら染めて、吹きこぼれたように、ほそく笑う顔を見たら色々とやばかった。
もしかしたら、案外。
俺の方が、場とか考えられないかも。