第5章 【聖夜の翡翠princess】第ニ幕
完成間近になった時。
「お姉ちゃん、先生に会えた?」
「ん?家康に?会っていないよ。迷惑になるといけないから。勤務中は例え見かけても、私から話しかけないようにしてるんだ」
一瞬、会った?じゃなくて、何で会えた?って聞き方に違和感を少し感じたけど、ただの言い間違いかな?と、思い特に気にも留めず、話を続ける。
「え〜〜先生、ぜったい喜ぶのにっ」
「そうかな?こら、勤務中。とか、言って。頭をコツンってされそうだけど」
家康が言いそうな台詞と、態度がすぐに浮かぶ。現に一度、ばったり廊下で会っちゃった時があり……どうしようかと悩んでいたら、すれ違いざまに頭をくしゃっ。って、された。
また後で。って、感じで。
「でも!夜は、デートだよねっ!?」
まるで自分のことのように、キラキラした瞳でそう聞かれて私は少し照れながら、返事をすれば……
みつばちゃんは、
「すてきなプレゼントが届くよ!」
お姉ちゃんにも、きっと先生にも!
ただ、そう言ってワクワクをおさえても抑えきれないような、眩しい笑顔を見せてくれた。
え?って、聞き返してもみつばちゃんは絶えず笑顔を浮かべるだけ。
それから、三十分後。手のひらサイズの、素敵なプリンセスのオーナメントが完成して……私は病室を後にした。
カツンッ。カツンッ。
休日の今日。
普段、外来の人で溢れているロビーはガラガラ。平日なら予約がない場合、何時間待ちにもなるような外来受付が本日はお休み。その為、病院内は靴音が響くぐらい静かだった。
雪が降りだした所為か、お見舞いにくる人もあまり居ないみたいで、入院患者さんも廊下には出ていなくて、音のない空間に迷い込んだような錯覚。
みつばちゃんの病室は二階。だからエレベーター待っているよりも、階段の方が早い。
螺旋階段を下り、休日用の出入り口付近に向かおうとした時……
「ご両親が迎えに来る前に、診察にいく。必要な書類を後で病室に、届けて欲しい」
「はい。わかりました」
(あれ、この声……)
話し声が聞こえ足を止める。