第5章 【聖夜の翡翠princess】第ニ幕
今日、一時帰宅許可が下りたみつばちゃんは、あと一時間もしたら、ご両親のお迎えがきて自宅で聖夜を過ごす予定になっている。ずっと前からそれを凄く楽しみにして……
ーーお母さんとお父さんに、ありがとうの贈り物がしたい!
ご両親にクリスマスツリーのオーナメントをプレゼントする為に手作り。
十一月の某日。突然、家康から裁縫を教えてあげて欲しい子がいるって聞いた時は、まさか小学一年生の女の子だとは思わなかった私。みつばちゃんと会ったのは、それがキッカケ。でも時々、家康から話をちょくちょく聞いていて...
ーーふわって笑う所。どっかの誰かさんに、ちょっと似てる。
いつか会ってみたいなってずっと思ってた。
素直で可愛くて、一生懸命。
私達は、すぐに打ち解けて今では家康に年の離れた姉妹みたいって言われるぐらい、大の仲良し。
「みつばちゃん。本当に寒くない?」
私は椅子から立ち上がり、人工風で揺れる白いカーテンを掴んで振り返る。
「お布団もかかってるし、暖房ついてるから大丈夫!」
みつばちゃんは、幼馴染の天音ちゃんと同じ病気。だからかな。つい窓から見える雪景色。それを、見ているだけで体を冷やしてしまいそうで心配。
そっか。カツンと足音を立て再び椅子に座り、視線をサイドテーブルに向ける。
仲良く並んだオーナメント。
エプロン姿のお母さんマスコット。
スーツ姿のお父さんマスコット。
(プリンセスはきっと自分用なのかな?)
ある場所に付いたモチーフを見て、そう思った。
女の子なら、きっと一度は憧れる。
プリンセス。栗色の長い髪、可愛い翡翠色のドレス。生地は私が昨日、製作完成したドレスの端切れと、家康にプレゼントするネクタイの端切れを、重ねた合わせた物。
(私が作った物。喜んでくれるかな?)
鞄の中に入っているオーナメント。
みつばちゃんにプレゼントしたくて、こっそり制作。明日の昼間、この病院の小児科病棟でクリスマス会が開催予定。だから、その時に渡すつもりでいた。