第5章 【聖夜の翡翠princess】第ニ幕
店内に流れる、
クリスマスソング。
暫く耳を澄まして聞いていると、清掃が終わった三成くんが休憩に入り、政宗もひと段落したみたいで、私を間に挟むようにして、二人はカウンターに座った。
横並びで、一列。
何か、弓道の団体戦みたいだね?って、懐かしい思い出話に花を咲かせながら、高校時代の後輩、三成くんが淹れてくれたあったかい日本茶を飲む。
三成くんは今は、有名な一流弁護士事務所のエリート。
今日と明日はお仕事がお休みみたいで、昼間だけ政宗の手伝いに来ていたことを後から聞いた。
「にしても。お前らもついに結婚か」
「一番。早い気はしていましたが、予想通りでしたね」
「ふふっ。二人はいつ頃ご予定かな?」
茶目っ気にそう言うと、政宗はパッと上を向いて視線をさり気なく逸らすし、三成くんは日本茶が変なところに入ったみたいで、苦しそうに咳き込む。
(また、その話は今度にしようかな?)
二人の反応にクスリと笑う。そして、何気なくふと腕時計を見て、私は短い声を上げ、慌てて鞄と家康のプレゼントが入った紙袋を持って立ち上がり……急いでお勘定を済ましてコートを羽織る。
「ご馳走様でした!また、次は家康と来るね!」
そう言うと、二人は目を合わせて少し間を開けた後、笑顔で頷くのが見えた。ん??不思議に思って、コクリと首を傾げるとあれよあれよと背中を押され、店の外に。
「気をつけろよ。そろそろ雪が降りそうだからな。三成みたいにぼっーっとして、すっ転ぶな」
「これだけ冷えていれば、積雪しそうですから。お気を付けて下さいね。では、またこんっ……んんっ!!」
「さぁーて。三成。次は洗い物、手伝えよ!じゃーな、ひまり」
「う、うん?」
政宗はそう言って、三成くんの口を塞いだまま店の中に戻って行った。