第5章 【聖夜の翡翠princess】第ニ幕
賑わっている店内。
お昼の時間をズラしたはずなのに、テーブルはお客さんでいっぱい。カップル、家族で来ている人の賑やかな声を聞き、何だか、お一人様なのがいつも以上に緊張して、入り口前で躊躇していると……
「いらっしゃいませ。ひまり先輩」
意外な人がお手伝いに来ていたみたいで、私はサンタの帽子を被った三成くんのエンジェルスマイルにホッとしながら、席まで案内して貰った。
「大繁栄だね!ごめんね。席取っといて貰っちゃって……」
私は手を合わせて、
カウンターに座り、厨房で調理をしている政宗に声をかける。
「ん、なこと。気にするな。後でゆっくり相手してやる。これ、食って待ってろ」
すぐに出て来た、一枚のお皿。
この和喫茶、クリスマス期間限定メニュー。一日、十食だけの和風チキサンド。この前、ゆっちゃんと食べ損ねて残念がっていたのを覚えてくれてたみたい。
「そろそろ、来る頃だと思ってな」
「ありがとう!ふふっ!伊達に長いお付き合いじゃないもんね?」
調子いいこと言うな。と、カウンター越しに伸びてきた手。コツンとおでこを小突かれて、下をペロッと出す。
政宗は高校の同級生で同じ弓道部であり、家康の親友。勿論、私も男友達では一番の仲良し。高校時代からこのお店を手伝って、卒業してからは本格的に修行を積んで今では、グルメ雑誌にも取り上げられるぐらいの人気店。
店内も昔とは違って少し改装され、広さもお洒落感も増して、でもちゃんと和の優しくてほっこりするような雰囲気は昔のまま。
頂きます!元気良く、手を合わせてパクリと口に頬張る。お腹も空いていたのもあるけど、本当に政宗の料理は心がときめくぐらい美味しい。
(ん〜チキンもパンも柔らかくて、美味しい〜〜)
パクパクと、頬に手を時折添えながら
夢中になって食べ続け……
気がついたら看板は準備中に切り替わり、お皿の上もお店の中も、いつの間にかなくなって、姿を消していた。