第4章 【聖夜の翡翠princess】第一幕
夜空に浮かぶ月。
それまでも凍えるような、空の下。
耳に届くのは……
「私もだよ。おやすみなさい……」
鈴をふるわすような心地の良い声。
俺は、電話を名残惜しく切り……
はぁ……。と、白い息を吐いた後。
今更、気恥ずさを感じ。コートの襟を立て、携帯ごと手をポケットにしまう。
(雪、降りそう……)
しんと静まりかえるような空気。
暗くて見えないだけで、もう既に降ってるいるかもしれない。そう思い、片手だけポケットから抜き出し、スッと何かを受け取るように、前に出す。
(今夜は冷えるな。……ひまり。ちゃんと、家の中に入ってたら良いけど……)
今の俺みたいに、
この夜空を見てたりして。
そう思ったら……
心配しながらも、嬉しさも同時に込み上がり……
寒さも和らいだ。
「お客様。お待たせしました」
声と同時に扉が開く。
背後に立つ、落ち着いた物腰の店員。
俺は手を伸ばして、紙袋を受け取る。
「ラッピングはご不要とのことでしたので、クリスマスカードだけ添えさせて頂きました」
「……どうも。指輪の方は、正月明けに取りに来る予定だから」
「はい。お待ちしております」
隣接する工房の前を通り、駐車場に向かい、運転席にの扉を開ける。車に乗り込む前にコートを脱ぎ、助手席の方にかけ、座席の上にはクリスマスプレゼントが入った紙袋を置いた。
それから……
車に乗り込み、エンジンをかける。
運転中、誤って紙袋が落下しないよう考慮して、ハートのクッションを支えがわりに使おうと、腕を伸ばして掴むと……
ーーこれね!お店で見つけて、一目惚したの!車で使って良いかな?
隣に座って、これを胸に抱き、コクリと首を傾げて俺を見つめるひまりを思い出す。
あの時は、一瞬……
男の車にハート乗せる気?
って、間抜けな顔して言いかけたけど。あの笑顔を見たら、口が勝手に「好きにしなよ」って、動いていた。
(助手席はひまり、専用だからね)
自然と緩む口元。