第4章 【聖夜の翡翠princess】第一幕
「まぁ。……それは良いとして。ちょっと、頼みたいことがあって。確か、明日。病院に来るんだよね?」
「うん!みつばちゃんと約束してて。急遽入った仕事も、今日で終わったから」
私で出来ることなら、何でも言って。そう言うと、家康は要件を話してくれて最後に……
「病院で会えるか、わかんないから。今、言っておく。……夜、楽しみにしてる」
「私もだよ。待ち合わせ、七時に時計台公園のツリー前で良いんだよね?」
明日の予定を確認。
どこで食事するかは、
内緒みたいで明日のお楽しみ。
「く、しゅん……」
「……もしかして、まだ外にいるの?風邪引くから早く中に入りな」
「うん。そうするね。じゃぁ、明日…」
そう言って、電話を切ろうとした時。
「ひまり」……。家康が名前を呼ぶのが聞こえて、もう一度、冷えた耳に携帯をあてると……
息遣いが少し聞こえて……
「………愛してる。おやすみ」
届いた、
夢心地のような柔らかい声。
私もだよ。おやすみなさい……
名残惜しい気持ち。
それを、何処かにしまって電話を切る。
携帯の画面に表示された時間に、暫く視線を落とす。吹き付ける冷たい風。頬がピリピリして、ゆっくり頭上を見上げた。
しんしん冷える冬の夜空。
まるで、豪華なクリスマスのイルミネーションのように星屑が散らばって、澄み渡った空気の中。
何だか、星が落ちてきそうに見えて……
思わず、無意識に……
ふわっと、手のひらを前に出す。
(そう言えば、家康。どこにいたんだろう?外にいるみたいだったけど)
今の私みたいに、
夜空を見上げているのかな?
そんな風に思ったら……
さっき感じた寂しさも消えて……
心があったかくなった。
コートの中に携帯をしまい、鞄の中からクリスマスプレゼントを取り出す。
早く、明日になって欲しい。
小さい頃のイブの夜……。
サンタさんが、プレゼントを届けにきてくれるのを待ち望んでいたように。
家康に、
早く会いたくて、会いたくて……
堪らなかった。