第4章 【聖夜の翡翠princess】第一幕
最後の飾り付けに入り……
位置を確認する為、視線を横に動かす。
一枚のデッサン紙面。
そこに私が描いた……
淡い翡翠色のシルク素材で製作した、
プリンセスラインのミモレ丈ドレス。
ベアトップタイプで、胸元のラインに沿うように、シンプルな金色の刺繍。腰元には、表生地は黒色で裏生地がローズピンクのベロア素材のリボンを回して、左前に大きく結び、切り替えスカート部分はプリンセスらしくふんわり。同色のチュール素材を使い、そこに小花や三つ葉の刺繍を、仕上げに足している最中。
ネックレスとクリスマスをイメージ。
そして「女の子の憧れを」
たくさん詰め込んだ……
世界に一つのドレス。
針と糸を使って、一つずつ丁寧に刺繍。
(よし!完成!)
それを抱えて……
「マネージャー!チェック、お願いします!」
アンティークの古時計。
ボーンボーン……
午後の五時の鐘を鳴らした。
チェックが終わり、私は大きなトランクケースを準備。その中でドレスが皺にならないよう、厳重に注意して収納。
「明日の昼間にお届けに行ってきます。配達先の住所と地図を頂けますか?」
「店頭引き取りだから、私が対応しておくわ」
「えっ。それなら明日来ます!もし、ご要望と……」
ご指名で全てお任せのご注文を頂いたとは言え……。電話で一度だけのやり取り。少し不安な気持ちが、顔に出てしまったのか、マネージャーはデッサン画を私の頭に、ポンとのせる。
「貴方、自信ないものを提供する気?」
「いえ!一生懸命、お客様に気持ちは込めました!」
そう、即座に自分の口から出て、ハッとすると……マネージャは微笑みを浮かべ、なら問題ないと言ってくれた。
「前まで、この店。一番人気デザイナーだった私が、オッケーって言ってるのよ。それでは、不満?」
私はゆっくり首を振り、お礼を告げる。
「ふふっ。毎月、マネージャーのドレスに見惚れて、ショーウィンドウに、顔を引っ付けていた高校生。知っていますよ?」
「あら?ぜひ、会ってみたいわね」
そんな可愛い子、後継者に欲しいわ。
その一言が、私の胸に自信と……
温かさを運んでくれた。