第4章 【聖夜の翡翠princess】第一幕
少し変わったご依頼。
スリーサイズも私と同じ。
しかも一番驚いたのは……
お客様名が『プリンセス』
(それに、いつ私を見たんだろう?お店の外に行くのなんて、ショーウィンドウのガラスを拭いたり、入り口で簡単な清掃している時ぐらいだよね?)
アレコレ考えながら、
作業ミシンのセットを始める。
(不思議なご注文だったけど、イメージもデッサンもすぐに出来て……)
早めに製作に取り組むことが出来た。これで、お客様のご希望の引き渡し日に間に合う。
喜んで頂けるかな?
素敵な聖夜のプリンセス……
(届けたい)
そのお客様だけの【story】物語を。
クリスマス時期になると、
毎日欠かさず付けている、
チョーカータイプの首飾り。
デザインが凄く可愛いくて、お気に入り。
小さい頃、ピンクの靴と一緒に貰った、大切なサンタさんからのクリスマスプレゼント。
もちろん、今も付けている。
真ん中にあるトップ。大小のハートがくっ付いたような、翡翠石。それを、指でそっと握りしめ……
ーー聖夜は、寝かせないから。
そのつもりでいて。
家康がこれに触れながら、
耳元で甘く囁いた台詞。
それをつい、思い出す。
(寝かせないって///つまり、そうゆう事だよね///)
今月は、お互い仕事が忙しかったり、時間が合わなくて、ゆっくり会って過ごせるのは、本当に久しぶり。つい、熱い夜を想像してしまい、赤くなる頬を両手で包んで、息を吸い込んで吐いた後……
きゅっと口を閉じて、
今はお客様のことだけを考える。
カタカタと揺れる作業台。
その上で業務用ミシンを動かしながら、
一気に集中力をあげ、
仕上げに取り掛かった。