第3章 戦国時代のX'mas ~準備編~
「依頼なら引き受けるよ?」
「でも……お姉ちゃん達、忙しいでしょ?」
陽菜の言うとおり、香菜をはじめ、針子全員、忙しくしていた。
あと一ヶ月で一年が終わるため、本格的に忙しくなる前に、着物の修繕、新年に着る着物などを依頼してきた人達が、たくさんいるからだ。
この反物で羽織をプレゼントしたいけど、忙しい姉たちに、これ以上負担をかけたくない陽菜は、諦めようと店から出ようとしたとき
「あ。なら、陽菜が自分で作ったら?」
姉の言葉にピタリと身体が止まる。
「……お姉ちゃん……私が不器用なの知ってるでしょ……」
「知ってるけど、家康さんに贈りたいんでしょ?家康さん、陽菜が一生懸命作ったって知ったら嬉しいと思うよ?」
「……でも……」
「私が教えてあげるし、手伝ってあげるから。頑張ろ?」
料理は好きだけど、裁縫だけは全く駄目な陽菜。
以前に一生懸命作った御守りも、少し歪んだものになっていた。
だが、家康はその歪んだ御守りを大事に持っている。見た目でなく、気持ちを受け取っていたのだ。
だが、今回は身につけるもの。
変なものは贈れない。……でも、この反物が、家康に似合うから贈りたい……。
それに、姉が教えてくれるなら、なんとかなるか……といろいろ考え……
「……うん。頑張って作ってみる。」
そう言って陽菜は、反物を購入した。
それを優しい表情で見ていた香菜は、パッと何かを閃く。