第8章 Pandora
この誰も居ない島で、3ヶ月。
まずはラルーと生きていかなくては
しばらくラルーを温め、回復するのを待った。まだ飛ぶ程の力はなさそうだが、私の肩に飛び乗れるくらいまで元気になった。本当はもっと休ませたいけれど、まずは島の状態を把握して日が暮れるまでに食料も見つけてみよう
ラルーを肩に乗せたまま、腰を持ち上げる。やはり身体が軽いのは気の所為では無いような気がした
無人島は海軍での訓練で何度か訪れたこともある。そのときは1ヶ月のサバイバル訓練だった
生きるための知識は持っている。
こうなるとは想定していなかったけれど、自力で生き抜く力をつけた方がいいと言ったガープ中将の言葉は正しかった
『じいちゃん、大丈夫かな』
上がじいちゃんに何かするとは思っていないし、できるとも思っていないが、孫思いだから大人しくしているとも思えなかった。
森の中を進みながら、さくりさくりと草を手折る音に耳をすませる。膝丈程までに伸びた草は歩く度にふさりと揺れて、若草色の波みたいだ。
もちろん手入れはされていないが、木が伐採されたように並んでいる。何十年も経っているせいでもしかしたら道も草が生え揃えて見えなくなっているのかもしれない。
木々の配置から、何となく道を想像しながら進む。
少しずつ傾斜がきつくなっていくものの、やはり人が歩くような細い道が傾斜に反って残っている。獣道にしては綺麗な地形だし、草が生えて見えないものの、少し逸れた土より石が多い
……もし、ここが本当に一族の島だったとして
内側から解錠が必要だというこの島で、私が鍵を開けれなかったら
じいちゃんはどうなってしまうんだろう。
ここに送り出した元帥や、一族の力を軍のものにしたいと思う政府はそれを手に入れられなくなる。
……けれど一方で、私は隠された存在としてそのまま消えることにもなる。彼らはなんのリスクも追わずに、私という危険因子をこの無人島に閉じ込めておける
少なくとも、外から誰かが入ってくることは出来ない
そもそも力をコントロールできるようになった私を、じいちゃん人質に管理下に置けると思っているのだろうか
じいちゃんはもちろんのこと、私が抵抗する可能性の方が断然高い
つまりこれは、実質流刑
誰も私が一族の力を扱えるようになるとは思っていないんだ