第7章 追ひ人
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真夏の如く降り注ぐ陽を、海軍モチーフのパラソルが遮る。影の中で犬の被り物をし、いつもと変わらない純白のスーツを身に纏って椅子に腰掛けた。
チエを部屋に残して、数時間後
ガープの船の上で、1つの電伝虫が鳴った
【私だ】
受話器を取ると、予想していた通りの人物が出る。その内容も、凡そ当たっていた
【.................沙汰は決まった。お前もこれでいいな、ガープ】
受話器越しに聞こえる、説教じみた声。すぐに返答しなかったのが不満だったのか、声の主は責め立てるよう、そう言った
【これでも譲歩した。だが、これ以上は無理だ。くれぐれもおかしな真似だけはするなよ】
最後に念押しだけされて、一方的に切られた。
結局返事をする暇などなかったではないか。
そんな小言も今日だけは粗末な事だとはっきり分かる。
「…………言われなくとも、わかっとるわい」
既に通信の切れた電伝虫に向かって、ガープはそう小さく吐き出した。周りにも、受話器越しのセンゴクにも聞こえはしない。1人の祖父の悪態が、ただ物悲しげに波の音に攫われていった
「ガープ中将、用意が整いました」
駆け寄ってきた部下は何も知らずに敬礼と共に報告した。
「よし、船を出すぞ」
「は、進路はどのように」
膝に手を着いて、立ち上がる。
「あのアホのいるところに」
「は?」
影から踏み出し、その姿が日に照らされる。拳を鳴らしながら、ガープは不敵にも天を睨みつけた
「1発殴りに行くぞ」
(────待っておれ、エース。)