第5章 終局
余裕があると見せかけ実は余裕が一切無いように見え、一周回ってやっぱり余裕がある!?
キャラが……キャラがつかめない……!
さっきと別の意味で不安になるが、すでに外堀は埋められ護岸工事も完了している。
絶対無理。もう逃げられないーっ!!
「なら後日改めて行うかね? 式の日まで会場が無事かは分からないが」
あの会話の後で、さらっとそんなことを言うか!
「……いいですよ。私だって今すぐ結婚したいし」
顔を真っ赤にして、そっぽを向く。
「おめでとうございます、カイナさん、坊ちゃま」
ずっと私たちを見ていた執事さんが、ニコニコしていた。
「ありがとうございます、ギルベルトさん」
「うむ」
クラウスさんは私に向き直り、
「カイナ、そうと決まればさっそく皆にこのことを知らせよう!」
固く手を握った。
「はい!」
そして私たちは幸せのままパーティー会場に向かう。
ずっとその手を離さな――。
背後でドガンと盛大な爆音がした。
「な……!?」
振り向くと、ヘルサレムズ・ロットのどこかのビルから、盛大な粉じんが上がっている。
パーティー会場が一瞬静まりかえったかと思うと、バタンと窓が開く。
スティーブンさん、ザップさん、チェインさん、K・Kさん、ツェッドさん、レオナルドさん、その他ライブラのメンバーがバタバタ走ってきた。
レオナルドさんが『神々の義眼』の超視力で爆発方向を調べる。
彼はすぐ目を見開き、
「クラウスさん! 場所は×××ストリートの式場近くです!!」
「む。その場所は……」
「ええ、坊ちゃま。明日、式を予定している会場ですな」
マジか。だがレオナルドさんは真剣な顔で続ける。
「次元の穴が空いてて、周辺の物とか通行人とかをブラックホールみたいに吸い込んでます!! しかも加速度的に吸い込む力が強くなってます!!」
おいおい。
スティーブンさんが真剣な顔で、
「クラウス! このままだとヘルサレムズ・ロットだけでなく世界全てが、次元の穴に呑み込まれるぞ!」
クラウスさんは顔を上げる。
その表情はもう、私たちを導くライブラのリーダーだった。
「緊急招集! すぐに次元の穴を塞ぐ!!」
『了解!!』
さっきまで飲んだくれていた人たちが、高揚に腕を上げ、叫んだのだった。