第4章 異変
…………。
パチッと目を開けた。
日付は変わったようだが、まだ深夜である。
……枕が硬い。まあいい加減に慣れてきた枕であるが。
そーっと身じろぎすると、寝息が聞こえた。
視線を動かすと、クラウスさんの上半身が見える。
彼は仰向けに寝ておられ、私に腕枕する形で熟睡されていた。
「…………」
そーっと、そーっと起きる。
大丈夫だ。動かない。ホントに寝てるみたい。
ホッとしてベッドから下り、パジャマを身につけた。
そしてベッドから離れる。
悪いことをしている気分で、何度も何度も振り返り、クラウスさんがホントに起きてないか確認してしまう。
うん。寝てる寝てる。対して私は元気である。
奇跡だ! 久しぶりに×回で終わった!
私の身体を気遣ったのかマジで疲れてたのか。
……頼むから後者が理由であってくれ。
そして廊下に出、目的もなく歩く。
もちろん本音は、クラウスさんの隣でぐっすり眠りたい。
でも眠りたくない。夢を見るのが怖い。
さっきもチラッと怖い夢を見てしまった。
妙な光の渦に、挽肉になるまで食い荒らされたり、拷問台で痛覚十倍の状態で麻酔無し解剖を受けたり、真っ暗闇に閉じ込められ泣き叫んでも出られなかったり。
悲鳴でクラウスさんを起こそうもんなら、昨日の朝みたいに心配かけまくってしまう。
……昨日の朝の一件は、多分そういうことなんだろう。
夢見が悪かった私をクラウスさんが心配したのだ。
だから早いうちからライブラに行った。皆も集まってた。
日中に何かしら異常が起こるのでないかと心配されて。
連日で、皆にンな迷惑をかけるわけには行かない。
なら寝ないのが一番だ。
どうせクラウスさんと出会う前、私の平均睡眠時間は一時間程度だったんだし。
「…………」
両開きの窓を開け、夜のテラスに出た。
目の前には見事なガーデンが広がっていた。
ただし一角に、何も植えられていない場所――新たに土を掘り起こした場所がある。
そこは、クラウスさんが新たに花を作る場所である。
『私が何の花が一番好きかって?
もちろん、バラです! 告白のときにいただいたあのバラ!
あれが今でも忘れられません!(いやあ本当に美味しかった!)』
……言葉の一部を省略したのは間違いだっただろうか。