第4章 異変
クラウスさんがガバッと起き上がる。さっきまで寝ぼけてたのに、一瞬にして覚醒しており、スマホを取るや否や、
「私だ。どうした」
はっきりした声で応じる。そういえば仕事日だっけか。
出勤にはまだ早いけど、ライブラのリーダーだし、定時なんて、有って無きがごとしである。
え……えーと……。
しかし、放置された私はちょっと困る。裸で寒いし。
「そうか。やはり先方はそう応じたか。了解した。K・Kに連絡し、召集に備えての待機を要請。
君はA-252のBルートを精査してくれたまえ」
何かしら緊急事態らしいが、クラウスさんは全く動じず、テキパキと指示を下す。そして何げに視線を下に落とし――。
「――っ!?」
絶句。パニック。
これほどまでに激しい動じ方をしたクラウスさんを見たのは、初めてであった。
「な……!? え!?」
先頃の告白の時同様、完全にパニクっていた。
うーむ。ワザと寝ぼけたフリをしたのかと思ったけど、マジで夢だと思ってたのか。
クラウスさんのクラウスさんも完全に沈静化しちゃったし、これは続きは夜までお預けかなあ。がっかり。
「あ……い、いや。何でもない。つ、つ、続けてくれたまえ、スティーブン」
隠せぬ動揺で声を震わせつつ、会話を続ける。
私はゴソゴソとクラウスさんの下から這いだし、のろのろとティッシュに手を伸ばす。
クラウスさんは超たどたどしく不自然な感じで、スティーブンさんと重要な電話をしてた。
ずーっと目を見開き、全裸の私を見て。
そういえばスゴい格好だな、私。
何だかんだでクラウスさんって握力強いから、つかまれたとこ、あちこち内出血して変色しとる。
あ。痛い痛い。動いたせいで、また噛まれたところから、たらっと血ぃ出た。
「!?」
またクラウスさんがショックを受けた顔。
全身べたべただし、シャワー浴びてこよっと。
あ、そうだ。
私は未だにガクゼンとしてるクラウスさんに近づくと、ちゅっと唇にキスをした。
「――っ!!」
あ。クラウスさんが後ろにものっすごい勢いで下がり、ベッドから転げ落ちた。
あーあ。
やらかしたかと思いつつ、私は全裸の上にバスローブを羽織り、汚れ物を持って部屋から出た。
クラウスさんは後ろで、まだ激しく動揺しながらスティーブンさんと話をしていた。