第4章 異変
長くなったので、ちょっと整理しましょうか。
私はカイナ。カイナ・シノミヤ。
皆さまに愛される、善良可憐な美少女である。
……すんません、調子こきました。
平凡極まりない小娘っす。
どこぞの銀髪チンピラに『チビ』呼ばわりされ、頭をグリグリされております。
私の来歴を話すと長いので、簡単にご説明しましょう。
まず私は、元々三流魔導組織『メビウスの輪』の奴隷兼、人体実験素材だった。
何でそんなの身の上だったかというと、私がこの世界の人間じゃなかったから。
『ヘルサレムズ・ロットのない並行世界の日本』から、この世界に召喚された存在だったのだ。
で、ここが一番重要ね。
召喚後、私は神性存在と契約させられた。
そして『不死』を得た。
不死。不死ですよ。あらゆる死を凌駕する存在である。
といっても死なないわけじゃない。むしろバンバン死ぬ。
が、死んだ後に復活する。
撃たれようが刺されようがミンチにされようが、どろっどろに溶かされようが、数時間で完全復活する。
その再生力! 人界を滅ぼすとも恐れられる『血界の眷属(ブラッドブリード)』の長老級に近いっ!!
何という脅威! マジ怖ぇ!! 私、人類の脅威になっちゃうかも!?
――という展開にはならなかった。
私、人外討伐組織の『牙狩り』本部から、正式に”脅威ゼロ”判定をされてる。
なぜか。私は『不死』以外に特筆すべき能力がないのだ。
『血界の眷属』が恐れられてるのは、その超常の域にある『力』と、その気になれば爆発的に仲間を増やせる『感染力』だ。
でも私は、死にさえしなければ、見た目相応の細腕の小娘。
オマケに私の『不死』はいかなる手段を用いても、他人に感染しない。
しかも性格は気弱で、他人に従順傾向。
なので現在は特に拘束もされず、身柄を秘密結社『ライブラ』に保護されてる。
で、そこのライブラのリーダー、クラウス・V・ラインヘルツさんと恋人同士になった。
……最後の一文だけが、自分で話しててもマジで意味が分からん。
でも実際にそうなったのだから仕方が無い。
クラウスさんに助けられた私は色々あって、今はライブラのビルの隣に家を建て、静かに暮らしてる。
願わくば、この平穏がいつまでも続きますように。