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【血界戦線】紳士と紅茶を

第3章 告白(下)



 最後にもう一度会話を、と思わなかったわけではない。
 が、まさかレアな『錯乱クラウスさん』に当たるとは。

 まあこれくらいが、後腐れなくていいのかなーと思いながら、壁のてっぺんに手をかけようとして。

「カイナ……」
 真下に、申し訳なさそうな顔をしたクラウスさんがいた。
 後からついてきたらしい。私は慌て、
「わっ! うわっ!!」
「お、落ち着きたまえ! 君を怒っているわけではない! 動くと危険だ!!」
 けど私は完全にパニック状態になる。

「いやああー!!」
「カイナっ!!」

 はしごから落っこちた私をクラウスさんが拾おうとして。

 大きな音がした。気がした。

 ……。

 …………。


「嘘……」

 十数秒後。もうもうとした煙の中、地面に横たわり、私は完全に固まっていた。

 嘘だろ。

 何が起こったかと言えば、色々だ。
 クラウスさんは私を助けようと、勢い余って壁にぶつかった。
 そこに異界生物が空から落っこちてきた。クラウスさんがパンチでぶっ飛ばした。
 私が壁に激突しかけ、クラウスさんが私を庇おうとして。
 ちょっと気絶してたので、詳細は私も覚えていないが。

 とにかく気がつくと壁が粉々になってた。

 装甲戦車の砲撃にも耐える、超強化・防犯仕様の壁が。
 私を守ろうとしたクラウスさんに砕かれた!

「怪我はないか、カイナ?」
「だ、大丈夫です」

 クラウスさんは私を押し倒す形で、見下ろしている。

 もうもうと立ち上る煙とガレキ。

 人類なのか? ホントに人類なのか、これ!
 頭真っ白になって、完全に固まる私。

 でも空気を読まずクラウスさんは言う。

「もう無駄な言葉はいらない。今すぐ君に伝えたい。
 カイナ――私と、つきあいたまえ!!」

「は、はいっ!! 喜んでそうさせていただきます!!」

 パニックでクラウスさんが何を言ってるか分からん。
 だが、断ったら何をされるか分からないことだけは確かだ。

 私は必死にうなずいた。

「それは……肯定と受け取っていいのだろうか!?」

 大きな声に、恐怖で身を縮める。

「は、は、はい!! どうぞお好きにっ!!」
 
 怒らないで殴らないで怒鳴らないで、という一心だった。

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