第3章 禁断の果実
【 Jun 】
智「…んっ、ぅ、あ、はぁ…」
智からキスの合間に漏れる甘い吐息。
それをもっと味わっていたくて、堪能していたくて、更に深く口内を抉る。
でも、そんな時間は長く続かないもので…。
俺の耳に智以外の、聞き慣れた音が響いた。
この音は…。
「…っ、」
智「ふ、ぁ…じゅ、んさん?」
いきなり顔を離された事に驚いた智が、可愛らしく首を傾げて俺を上から目線で見上げてきた。
最高に可愛いんだけど、今はそれ所じゃないからな…。
「智、はやく靴を脱いで」
智「え、あ…はい」
敬語を辞めた俺に、びくりと肩を揺らしながらも
靴を脱いだ。
「靴を持って、えーっと…あ、あの部屋に」
智「あ、の…さっきから一体…」
智が、そう言葉を続けようとした時
鍵の差し込まれる音が部屋に響いた。
やっぱり、妻が戻ってきた。
智「あ、これって…」
「良いからはやく、部屋の中に…!」
俺は智の背中を押して、妻と使っている
寝室に押し込んで扉を閉めた。
丁度のタイミングで、妻がドアを開け
部屋に入ってくる。
『あら、あなた…そんな所で何してるの?』
妻にはバレていない、か…。
「ああ、トイレに行こうと思ったんだ…君こそどうしたんだ?」
『ちょっと忘れ物をね…パスポートを』
そう言うと彼女は、荷物を持ったまま
リビングへ行ってしまった。
その背中をゆっくりと追いながら、
寝室の方を気にしていた。
『あった! もうこれがないと飛行機に乗れなかったわ』
「今度からは気をつけるんだぞ…?」
『ええ、もうここまで取りに戻るのは面倒だから』
「他にはもうない?」
『もう大丈夫よ、じゃあ行ってくるわね』
「うん、行ってらっしゃい…」
妻を笑顔で見送って、鍵を急いで閉めると
そのまま寝室の扉を開けた。
「智、もう大丈夫だよ…って、え?」
智「ぁ…っ、」
扉のすぐ下で蹲っていた彼は、俺を
情慾(じょうよく)の目で見上げていた。
その身体は、熱い程に昂っていて
智は既に下半身を露出させていた…。