第23章 今日の夕食は焼いたお餅ですよ
優しく唇に壮五さんの唇が触れる。
唇を食まれて、口全体を覆うように重ねられる。
「ん…ふ、ぁ……」
柔らかい。
気持ちいい。
好き。
もっとして。
そんな欲求が抑えられなくて、自分から舌を伸ばした。
軽く壮五さんの唇に触れると壮五さんも舌を出してくれる。
それが嬉しくて一生懸命舌を絡ませる。
「ぁ、んっ…は…んん……?」
いつもとキスが違う。
いつもはもっと舌だけじゃなくて口内まで余す事なく触ってくれるのに、今日はなんだか、控えめって言うか……。
そろりと閉じていた目を開ける。
バチリ。視線が交差した。
「んん!?な、なんで目を開けているの!!」
「なんでって…言いましたよね。ゆっくりじっくり味わうって」
「そ、そうだけれど!」
「ふふ、分かりました。ほら、目を瞑りますから。続きをどうぞ?」
クスクスという笑い声と子供と話しているかのような喋り方。
ズキリ。
また痛む。
「……ん?何をして…って、どうしたんですか!?」
壮五さんの顔の上に雨が降る。
焦って上体を起こした壮五さんが親指で私の目尻を拭う。
「泣かないでください。僕は貴女の涙に弱いんです」
優しい声。
でも、その声が聞けるのは私だけじゃ無い。
「…やっぱり、壮五さんは、私のこと我儘な子供としか、思ってないのね……」
「え……?」
「ひぅ、私が、しつこく何度も迫ったから、付き合ってくれて、ぅ、私が…愛されたがりの我儘だから、私のこと、好きになってくれないのね……!」
「お、落ち着いて、落ち着いてください」
「私ばっかり壮五さんが好きで、好きで好きで仕方がないのに、そ、ごさんは、私のこと好きじゃない…ふ、ぅ、三年も、私に付き合わせて、ごめ、なさい…」
「な、に、言って…」
「わたし、ずぅっと壮五さんに、ふさわしい彼女になれるように頑張ったのに……ど、すればいいの…?どうしたら、好きになってくれますか…?どうしたら、貴方の彼女になれるのか、もう、わからな、」
「百合さん!!」
「!!は、い……」
ボロボロと涙が止まらない。
止めたいのに、止まらない。
「百合さん。僕がいつ貴女のことを好きじゃないなんて言いました?」
「…いってない」
「貴女は賢い人です。だから考えすぎてしまったんですね」
ちゅ、ちゅ、と唇と舌で涙を拭われる。
「…僕は、貴女のことが好きです。ちゃんと恋人だと思ってますよ」