第20章 目は口ほどに物を言う
「はぁ……」
目の前には一織の実家。
憂鬱だなぁ。
約束だし、仕方ないからインターホンを鳴らす。
『開いてますから入ってください』
はいはい、そうですか。とドアを開け鍵を閉めて一織の部屋に向かう。
「一織、来た……」
「荷物は適当に置いてください」
「うん…」
スクールバックを無造作に置いて一織から本題を聞こうとした時、腕を強く引かれ視界が回った。
「はぇ…?」
思考回路が追いつかない。
目の前には一織の整ったお顔。
背中に当たるのは一織のベッド。
これは、つまり……押し倒された?
理解した途端顔が熱くなる。
「い、いお、一織?ど、したの?」
「付き合いましょう、今すぐに」
「はぇ?」
「私たちは今この瞬間から恋人同士です。ですから、何も問題はありませんよ」
「いや、問題ありまくりっていうか、いおっ、んむ!?」
唇に当たる柔らかい感触。
今まで想像してきたよりもずっと柔らかくて、苦しい。
「ん、ぁ、は…んんっ」
「ん……」
「はふ、ちょ、や、んん!」
息を吸った瞬間、生温い一織の舌が口の中に侵入した。
唾液の混ざる音が響いて、息の仕方が分からない。
ぬるぬるしてるけど全然気持ち悪さは無くて、むしろ、このまましていたいくらい一織の舌も唇も気持ち良くて、とろけそうだった。
「んぁっ…は、は…」
「気持ちが良いようで良かったです」
一織がシャツのボタンを外し始める。
まずい、このままでは本当に、どうにか止めなければ。
「一織だめ!」
「…どうしてそんなに…」
「分かってるんだから!一織には可愛い彼女がいる事くらい!」
「……はあ?」
「スーツ着たクリーム色の髪の女の人、仲良さそうに歩いてた」
「それはマネ…」
「だから!今の恋は忘れるの。合コンで新しい恋見つけて、幸せを掴むの!」
「……今なんて言いました?」
「え?合コンで新しい恋を見つけ……あ」
まずい。
なんでか分からないけど一織の機嫌がものすごく悪い。
………よし、逃げよう。
そう思って一織の胸を思いっきり押すけど、びくともしない。
「い、いお、ひぁっ」
首筋にピリッとした痛みが走る。
「勝手に勘違いして、勝手に離れて、あまつさえ合コンに行こうとするなんて……少し野放しにし過ぎました」
一織の目が怖い。今まで見た事ないギラギラした目。
「私があなたをどれ程想っているか、その身体に教えて差し上げます」