
第20章 目は口ほどに物を言う

一織side
「今帰りました」
「おっ、おかえり一織。今日は学校どうだった?」
「いつも通りですよ」
「何回?」
「5回です」
「お前なぁ、それだけ告白されててなんで付き合わないんだよ」
「えっ、一織告白されたの?」
「七瀬さんには関係ありません」
「つれない事言うなよ〜」
「一織にな小学校の頃から告白し続けてる女の子がいるんだよ。もう十年以上だぜ」
「十年以上……一途でいい子じゃんか。なんで付き合わないの?アイドルだから?」
「……あなたには関係ないと言っています。ほら、ホットミルクいりますか」
「いるー!」
彼女もこの人も単純で扱いやすいな。
ホットミルクをいれながら、今頃彼女は私への告白の仕方を考えていると思うと頬が少し緩んだ。
初めて彼女に告白された時、思わず公園で遊ぼうと告白をはぐらかしてしまった。
そうするのも仕方ないと思う。
彼女は頬を真っ赤に染めながらも、こちらをまっすぐ見て想いを告げてきたものだから、可愛いくてもっと見たいと思ってしまった。
はぐらかせば告白する可愛らしい彼女をいつまでも見られる。
それに色々理由をつけて彼女と居られる時間もできる。
こんな事をしていればいつか愛想を尽かされてしまうと思うかもしれない。
けれど、そんな事は絶対に無いと言いきれる。
彼女は私にベタ惚れだからだ。
私だって彼女の事を想っている。
付き合うのはアイドルとして成功して、高校を卒業してからでも遅くはない。
そう思っていた。
「今、何て言いました…?」
「だから、今まで付き纏ってごめんって…」
「どうしてそんな思考回路になってしまったんですか?誰かに何か言われました?」
「別に一織が心配してるような事はないよ。ただ……もう無理かなって」
「無理って……」
「私さ、ポジティブ思考が取り柄なの。でも、それにも限界があるって言うか……」
「東雲さん……」
「一織だって拒否はしなかったけど、私の事恋愛の意味では好きじゃないでしょ?友愛でしょ?もう一織に迷惑かけないから、外堀埋めるのもやめるから、告白しないから、だから…お願い、友達でいて……」
「……誰がいつ迷惑だと言いましたか……」
「今何か言った?」
「いえ、分かりました。私もあなたに話したい事があるんです。明日の放課後、私の部屋に来てくれませんか」
私が簡単にあなたの事を逃すと思ったら大間違いですよ。
