第2章 ズルい言い方
「おねが…伊豆くん…」
「どうした?具合悪いか?保健室行くか?」
「…して…」
「何だって?」
「エッチ…したい…」
「は?いや、それはダメだろう。お前何言ってるんだ?」
伊豆くんが冷静なツッコミをしてきた。
伊豆くんはいつも冷静キャラで…それでいて行動力があるから、クラスでも目立った存在だった。私は特別彼と親しかった訳ではないから、彼の性格の細かいところまでは知らない。でもきっと今、彼は私に呆れているだろう。今の今まで教師から暴行を受けていたのに、クラスメイトとエッチをしたがるなんて。ハッキリ言ってバカだ。
けれど私は自分を止められなかった。
「薬…。せんせい…飲まされ…て」
「えっなんだそれ、ヤバいな。やっぱり保健室行くぞ」
「ダメ…ダメ…お願い…。伊豆くぅん…」
私は彼の身体にしがみつき、彼の首筋にチュウと吸いついた。
「おい、桃浜!やめ…お、おい危ない!」
伊豆くんはバランスを失って倒れ込んだ。それでも彼は、私が身体を床にぶつけないように咄嗟に抱きかかえてくれた。優しいんだなあ。
「伊豆くん…お願い…お願い…。私のこと、好きにしていいから…。このままじゃ熱くて、死んじゃう…。伊豆くんは、私を見捨てないよね…?」
涙声で伊豆くんにすがりついた。我ながら、ズルい言い方だ。ひどい人間だ、私は。
伊豆くんはなおもしばらく考えた後、「わかった」と言ってくれた。
「まず、起き上がれ。苦しいから」
「ん…ごめん」
床の上で、私たちは向かい合って座った。伊豆くんは少し難しい顔をしている。彼のそんな表情が何故か凄く格好よく見えて、私の心臓は早鐘のように鳴った。きっと、きっとこれも全部、薬のせいだ。
「で、どうすればいい?」
「えっと…」
私はスカートを少しだけ持ち上げ
「触って…くれる?」
と聞いた。
恥ずかしい。自分からこんなことをするなんて。恥ずかしすぎて伊豆くんの顔を見ることができない。きっと浅ましい女だと思われてるんだ。