第2章 ズルい言い方
「桃浜…」
伊豆くんの声が私を呼んだ。目だけを動かして彼を見る。彼は、私の方を見ないようにしているのか、顔をうつむけていた。
「スマン。見てないからな…あんまり。じゃ…」
そう言って立ち去ろうとした。
私は
「待っ…て」
と彼の背中に呼びかけた。
伊豆くんが立ち止まる。
「立てなぃ…の…。助けて…」
「あ、ああ」
伊豆くんはゆっくり近寄ると、私の腕を握り、少し荒っぽく上体を引き起こした。
「んっ…!」
「あ、痛かったか?」
「ん…ちが…」
まだ頭が熱い。ちょっとしたことでも震えてしまう。息も整えることができない。絶頂の寸前で止まってしまった私の身体は、まだ、もっと、と悲鳴を上げていた。
床に手をついてゼエゼエと呼吸する私を心配したのか、伊豆くんは「大丈夫か?」と身を屈めて尋ねてきた。
「ごめん…ね」
私は伊豆くんの身体に抱きついた。
「ちょっ…桃浜、おい」
「ごめん…」
彼の身体が気持ちいい。彼の匂いが気持ちいい。薬が私をダメにする。ああ、私、めちゃくちゃになりたい。