第3章 ORIGINAL COLOR③
あの日堂本剛に抱きしめられて以来、
頭の中がピンク色というか、もう彼一色になってしまって、高鳴る気持ちが抑えられなくなってしまった。
ニヤリと笑う彼の表情
耳元で掠れる声と、触れる息
その日着ていたシャツの洗剤の匂い
ドクドクとなる心臓の音。
それら一つ一つのことが、頭の中で何度も何度も繰り返し流れては、わたしはドキドキすることをやめられなくなってしまった。
もう一度だけ抱きしめて欲しいなんて、欲深いことだって考えるようになっている。
「ちょっと、高橋〜?!」
「え?!!」
ぼーっと惚けてると、アヤメに声をかけられる。
「ちょっとこの間からずっとぼーっとしすぎでしょ!!」
「ごめんごめん。」
「なんかあったのー?」
アヤメは学食の370円カレーを掬いながら心配そうにこちらを覗き込む。
「いや、なんもないよ。」
「のびちゃうよ?うどん。」
「あぁ、、、。」
ぼーっとしていたせいで、うどんを頼んで食べていたこともすっかり忘れてしまっていた。
「それにさっきからずっとスマホ鳴ってるし。」
「え?!」
わたしは慌てて机に置いてあるスマホを見ると、ラインが4件続けて来ていた。
剛からかと急いで開けると、相手はクドウタクヤと書いてある。
誰だ?
ラインを開くと、
「いつ空いてる?早く練習見に来てよ。」
と書いてあった。どうやらこの間の男からのようだ。嫌なことを後回しにすると、こうやってツケが回ってくる。どうにかしなければ。
はあ〜。と大きなため息をつく。
アヤメは疑うような目でじーっとこちらを眺めている。
「あ、ごめん。」
「大きなため息。ほんとはなんかあったでしょ?ライン誰から?」