第1章 ORIGINAL COLOR①
「一応ひろかさんの歌やからな。本人に褒めてもらって嬉しいわ。」
わたしは照れくさくなって下を向いた。
だってオリジナルカラーは恋人とのラブソング。
いくらインスピレーションを受けただけと言っても、あまりにも真っ直ぐなラブソングにドキドキしてしまった。
「だから今年も頼みます。」
「はい。」
そうニコッと笑う笑顔は少し女の子みたいで可愛いかった。
わたしは毎年学祭の時期は堂本剛からアートのモデルを頼まれている。
モデルと言っても何をする訳でもない。
ただどっか出かけておしゃべりしたり、散歩したりするだけ。
オリジナルカラーを作った年は、海に二人で行った。
水着になってはしゃぐ訳でもなく、Tシャツにビーサンで浜辺を歩きながらたわいもない話しをした。
基本的に剛からの質問にわたしが答える形式で、どんな家族で育ったとか、なにしてるときが楽しいとか、動物は何が好きとかそんなこと。
剛は誰かからインスピレーションを受けるとより良い作品ができるらしく、そんな風に話したりしながら曲のイメージを膨らませて完成したのがオリジナルカラーである。
学祭で初めて聴いたときは衝撃的だった。
ただダラダラと会話してるだけだったあの日は剛にとってこんなキラキラした切ない世界として見えていたんだと思うと、わたしとは見える世界が違うのだと思った。才能のある人はこういう人を言うんだと、19歳にして思い知り、とにかくショックを受けたものだった。
懐かしい。
あれから毎年の恒例行事になるとは思いもしていなかった。
きっと、あまりに人気になりすぎてしまって、モデルを誰かに頼みにくくなってしまったのだろう。
わたしなら秘密は守るし、変に期待したり求めたりしないから楽なのだ。
この関係を続けたくて、わたしから連絡をしないし、期待も一切持たない。
そう決めたのだ。