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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第2章 僕と貴方の唇は


ベンチから立ち上がった礼之のユーリより若干濃い金髪が、夜風に揺らめく。
「最初はただ悔しくて、すぐにでもシニア上がってあの『ロシアの妖精』にリベンジするぞ!なだけでした。だけど、純さんの現役最後の試合だった全日本を通じて、僕は自分の事が何も出来てなかったのに気付いたんです。こんなんじゃ貴方に勝つどころか、まともにシニアで戦えっこないって」
「それで、ジュニア時代の俺の記録全部塗り替えたんだから、大したモンだぜ」
「ジュニアの貴方にも勝てないようじゃ、お話になりませんから」
やわらかな口調の中にも確固たる意志を秘めた礼之の言葉に、ユーリは笑みを零す。
「それと僕、ちょっとだけプリセツキーさんに怒ってるんですよ」
「?」
「去年のオフシーズンに、僕より先に純さんから振付貰ったでしょう。勝生さんは仕方ないにしても、約束は僕が先だったのに」
「いや、あの時はマジでサユリしか頼める奴がいなかったんだよ!別にお前を出し抜くつもりなんてなかったっての!」
昨シーズン前のアイスショーの一件を指摘されたユーリは、慌てふためきながら弁解した。
「純さんからも、同じ話を聞きました。緊急事態だったって…だけど、僕はまたしても貴方に先越されたんです。ズルイ!」
軽く頬を膨らませた礼之に、ユーリは気まずそうに視線を逸らす。
「でもね。プリセツキーさんが純さんの振付で滑る動画を観た時から、僕の中で貴方の印象が変わったんです。単に同じ競技者としてではなく、もっと貴方のスケートや貴方自身の事を知りたくなった」
直ぐに顔を綻ばせた礼之は、再度ベンチに坐り直すとユーリに身体を向ける。
「貴方だって、常に絶対的な強さを持ってる訳じゃない。充分有力と呼ばれる今ですら、厳しい世界を懸命にもがき続けているんだなと感じました」
「…お前もだろ」
「はい。もがきすぎて、今回やらかしちゃいましたけど」
ユーリの返事に礼之は苦笑交じりに頷いた。
「そして、そんな貴方の姿が…本当に美しいと思ったんです」
「え?」
「前置きが長くなりましたが…あのEXが、僕の正直な気持ちです。貴方との事をただのアクシデントで済ませたくない。僕は…貴方とキスがしたい」
見つめてくる礼之の真剣な表情に、ユーリは思わず身構えた。
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