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【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第2章 僕と貴方の唇は


勝手知ったる顔でバンケットルームを出て、ホテル内に位置するガーデンまで移動する礼之の後を、ユーリは慌ててついていく。
「ここならゆっくりお話が出来そうです。寒くないですか?」
「バンケットが暑かったから、丁度いい」
会場内ではきっちり絞めていたネクタイを緩めながら、ユーリは月明かりが差し込む夜のガーデンを見渡す。
「実はこのバンケットのあるホテル、以前ジュニアの試合で勝った時に、両親からのご褒美で食事に連れて来て貰った事があるんです。その時に、ここから夜の月が凄く綺麗だったのを思い出して」
言いながら、礼之は仄かに雲がかっているが夜空に輝く初冬の月を眩しそうに見上げた。
「でも、今夜の月の方が綺麗だ。…貴方と一緒だからかな」
「だから、どうしてお前は臆面もなくンなこっ恥ずかしいセリフを…」
照れ臭そうに続ける礼之に、思わずユーリの方が恥ずかしくなる。
「実は、結構心臓バクバクいってますよ?ホラ」
礼之に手を引き寄せられたユーリは、直後通常よりも激しく脈打つ彼の鼓動と熱い体温を手のひらに感じる。
「プリセツキーさんは、どうですか~?」
ユーリの手を離した礼之は、少しだけわざとらしい仕草でユーリの胸に触れようとしたが、「触るんじゃねえ」と避けられた。
近くのベンチに腰を下ろし、暫し2人で夜空を眺めていたが、やがてユーリは顔を動かすと、無言で月を見つめる礼之に声を掛けた。
「おい、今日のあのEXだけどよ…」
「はい。これまでの大会ではやらなかった、本邦初公開です」
「そうじゃなくて!あー…あの歌の通りだとしたら、その…」
複雑な表情で乱暴に己の金髪をかきむしるユーリに、礼之は数回目を瞬かせた後で「先に、僕からいいですか?」と切り返した。
「正直言うと僕、少し前まではそれ程プリセツキーさん自身には、興味なかったんです」
「…あ?どういう意味だそりゃ」
人をこんな所にまで連れてきておいて何なのだ、と言いたげなユーリの視線に気付くと、礼之は慌てたように首を振る。
「あ!勿論スケート選手としての貴方とは、ずっと再戦やリベンジを願ってましたよ。だってジュニア時代のGPFで、僕貴方にコテンパンにされちゃいましたから」
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