第1章 思えば…
「水瀬までいなくなられたら、俺が困る…」
「……大丈夫だよ。だって、もう1人じゃないよ? 蓮巳くんや神崎くんも…」
「そういうんじゃなくてだな…惚れた女だから心配になんだよ…」
「………へ?」
誰が誰に惚れた?
そんなの知らない…だって、今までずっと見てたけどそんな素振りなかったもん。
「本当は、言うつもりなかったんだけどよ。俺、こんなんだからよ、辛い思いさせるだけだって…ただ、やっぱなんかあった時に、幼馴染でも、何も知らなかったは嫌なんだよ。ほかの誰にも触らせたくねぇ」
「………」
「嫌なら離れてくれ…そしたら…」
「………」
どうしても、その先を聞きたくなくて、これが夢なら覚めないでほしくて、離れたくなくて、自分よりも大きな鬼龍くんの身体を抱き締めていた。頭よりも先に身体が動いた。
「…なんで今言うかな」
「仕方ねぇだろ。言わなきゃいけねぇって思ったんだから」
「いつか離れなきゃって思ってたのに…」
「無理して離れなくていいだろ」
「……」
抱き締め返されて、その暖かさがなんだか胸中に染みいってくる気がした。
「ずっと、好きでした」
「俺のセリフとるなよ……好きだ…俺のそばに居てくれ」