第1章 思えば…
「おま、もしかして…一中の親指姫か…?」
「さぁ、どうでしょ? 今度から当たり屋なんてしないでくださいね?」
とりあえず、事を済ませてバイト先に向かった。
これ、学校にバレたら進路影響出そうだな。自業自得だから仕方ないんだけど…
それから何事もないようにバイトに入って、5時間働いてからバイトを終えて、バイト先から出るとなんでかバイト先の前に鬼龍くんがいた。
紅月とかで遅くなる時はついでに迎えに来てくれてはいたけど、今日は私服だった。
「あれ?どうしたの? こんなところで」
なんでか眉間に皺を寄せて、私の前に来た。
「……鉄と嬢ちゃんに聞いた。2人逃がすのに囮になったんだってな?」
「あぁ…でも、囮ってほどのこともしてないよ?」
なるほど。鬼龍くんに話が届いていたのか。でも、それなら家でも確認できるけど…あ、でも、ちはるちゃんの教育には良くないか。
「胸触られかけてか?」
「ちゃんと触られなかったよ?」
「そういう問題じゃねぇよ。お前、女の子なんだからそんな…」
「鬼龍くんは私のこと女の子って思ってないでしょ? それに、鬼龍くんは私がどのくらい空手出来るか知ってるでしょ。ほら、早く帰らないとちはるちゃんが待ってるよ」
話を無理やり打ち切ったとは思う。
でも、鬼龍くんの口から今から言われる言葉が分からないけど聞きたくなくて、私は家に向かって歩いた。そしたら鬼龍くんも歩き出したと思ったら、肩を掴まれて振り向かされた。
「思ってなかったら迎えに来ねぇよ…」
見上げて見えた鬼龍くんの表情は眉間に皺が寄っていて、辛そうな表情だった。こんな表情、おばさん、鬼龍くんのお母さんが亡くなった時以来だ。