第1章 思えば…
「あやってさ、幼馴染大好きだよね」
「え? いきなりなに? たしかに嫌いじゃないけど…」
お昼休みに友達とお弁当を食べて、お菓子を食べながら話していたら私に矛先が向かった。
「たしかに、普通幼馴染でも朝から面倒見ないもんね?」
「それにおにぎりまで多めに作ってわざわざついでとか言って渡してたら…」
「そ、そんなことないよ。ほら、家も向こうもお父さん達仕事でなかなか家にいないし、一緒にご飯食べてた方が節約になるし…」
「でも、満更じゃないんでしょ?」
核心をつかれてしまうと、どうとも言えなくてお菓子を食べることにした。
「それにしても、あやの幼馴染って誰? アイドル科にいるとこまでは教えてもらったけど…」
「でも、2人もいてそのうちの1人があやちゃんの王子様になるなら探すのは難しそうだよね」
「だ、だから、王子様とかじゃないよ。今も昔も…」
王子様なんて柄じゃない人だけど、いつも私やいっちゃんのことをなんだかんだ言いながら、守ってくれてた優しい人だ…
「でも、これだけは言っといてあげる」
「な、なに?」
「これからそいつにあやじゃない別の女の子が隣にいると思うなら早く気持ちに踏ん切りつけちゃいな。これはあやのために言ってるんだよ?」
そんなの…ずっと前から分かってるよ…
紅月が出来てから、私は隣にいられないって痛感したもん。蓮巳くんと神崎くんと舞台に上がっている顔は生き生きとしていて、とても楽しそうだったし…
それに今年に入ってからプロデュース科のあんずちゃんが転入してからよく一緒に買い物してるところバイトに行く途中とかに見かけるし、それに鬼龍くんはもう1人じゃなくてたくさんの人がいるから、もう私もいらなくなる。
そんなの、ずっとわかってる。ただ、まだもう少しだけって先延ばしにしてしまう自分がいる。
「雫、これ例の幼馴染たちが見たら私ら殺されない?」
「泣かすような原因を起こした奴が悪い」
「またそんなこと言って…まあ、私も雫の心配は分かるけど…」
「気持ち全部とまでは言わないけどさ、長くいるならあやの変化くらいわかってそうだけどね」
「アイドル科も去年は色々と大変だったからそれどころじゃなかったかもしれないよ?」