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【テニプリ・跡部】AfLW 番外編

第1章 happily ever after




ほんのりと温かく、匂い立つような風が吹き。誘われるように涙を拭い、顔を上げてはっとする。視線の先、跡部がこちらを見ているような気がして。でも、ここから跡部のいる辺りまで少なく見積もっても80mほど…さすがに顔までは判別できないだろうな、とタカを括っていた、のに。

跡部が一歩、二歩、真っ直ぐこちらに足を進める。



「…松元っっ!!!」


――あ、バレた。















「…松元っっ!!!」


俺様の呼ぶ声にびくり、と身を震わせた姿に確信し、さらに足を進めようとするも。互いを阻む高いフェンスに気付き、身を翻す。


「テメェ、そこで大人しく待ってろ!動くんじゃねぇぞ!!」


ぐるり、とコートの外周を大周りするように全力で走る。アイツが立っていた場所あたりまで来たはずだが、姿が見えず。息を整えながらぐるり、と見渡すと、グラウンドを横切り、雑木林へと向かっている姿を見つける。


「てめ、松元っ…いい度胸じゃねぇかっ、アーン!?」


先程までより一層、スピードを上げ。何度も夢の中で手を伸ばした、その腕を掴もうと駆け出す――















「いやいや、え!?こわっ!勢いこわっ!!」


この期に及んで、怖気づき。こちらに回り込もうと跡部が背を向けた瞬間、逃げようと駆け出したものの、逃げられるはずもなく。どんどん縮んでいく距離に焦りながら、今更止まれなくて必死に足を動かす。


「松元!逃げてんじゃねぇ!」
「逃げてるわけじゃない!アンタが止まれば止まるつもりなんだからっっ!」
「そんな言葉信用出来るわけねぇだろっ!!」

「ちょっと、あたし珍しくパンプスなんだからねっ!手加減くらいっ、しなさいよねっ…!」
「アーン!?コート5面分のハンデをやっただろうがっ…!」



お互い息を切らす。額に汗が滲む。やっとグラウンドを超え、林に駆け込んで、背後の跡部の様子を伺ってみるともう差なんてほとんど無くて。何の意地だろう、もうひと頑張り、と前を向き直した、その時。

また吹き抜ける強い風が、鬱蒼と茂る林の向こう、一本の桜の大木を揺らし。桃色の嵐が舞った。


「松元っ…!!」
「え、うわ、きゃあっ…!!」


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