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【テニプリ・跡部】AfLW 番外編

第1章 happily ever after




てくてくと、中等部と高等部を繋ぐ遊歩道を歩く。東京ドーム何個分だったか、広大な氷帝学園の敷地。春の麗らかな陽気に誘われて、黄色い蝶が飛んでいる。

中高交流練習で訪れたことがあるくらいで、高等部に立ち入った事は数えるほどしか無かった。もうここの生徒になる事は決まってるんだし――そう思いつつ、何処かいけない事をしているようでどきどきする。

部活は全体的に停止なのだろうか、人っ子一人居ない校内を歩く。お目当てのテニスコート、巨大なフェンスがグランドの向こうに見えてきた。高等部のそれも、やはり馬鹿でかい。


そしてまた、風が吹いた――ざっと音を立てて、心まで揺らすような。










額から滴り落ちた、汗をリストバンドでぐいっと拭い。またボールの軌道に体の向きを合わせ、ラケットを正面に構え、打ち返す。今まで何千回、何万回も繰り返したその動作は、今では精神統一の代わりのようだった。

ササクレだった心も、無心に変わる――もう三月も下旬。春休みに入って暫く経つ。だと言うのに、四月から此処に居るはずの松元はまだ戻っていない。

守河も連絡を受けていない、と言っていた。幾ら何故か目の敵にされているとはいえ、まさか隠しはしないだろう。


あいつが留学してからというもの、数えるほどしか連絡を取っていなかった。発ってすぐの、安否確認と、年末年始の挨拶程度。俺様の誕生日にも祝いの言葉があったか――向こうから連絡が来ないのも、自分からしていないのも、きっと同じ理由…こちらとしては、ケジメのようなつもりでいる。


しかしまさか、こんなギリギリまで連絡が無いなんて予想だにしていなかった。事前に連絡が入ったら、また馴染みの面子で空港まで迎えに行くのだろう、とぼんやり考えていた。本当は俺様一人でもいいし、何かと好都合ではあるが――全員、の方が松元は喜ぶだろう…そんな情景まで、薄らと思い描いていたのに、だ。


また、この苛立ちすらも攫って行ってしまいそうな、強い風が吹き抜けていった――



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